2月28日(日) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで渡邉聡監督の「復活」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで渡邉聡監督の「復活」を観る。


2015年(平成27年) SOMOVE! FILMS 80分 カラー Blu-ray


脚本・監督:渡邉聡

撮影・編集:国立隆吾

出演:大橋正英、逢澤純世、上木實、リ・コウジ、一明忠生、山城秀之、三村正志、吉村康宏


インディペンデント映画のような風合いを持ったこの作品は、鮮明だからこそ籠もるようにも聴こえる録音や、明澄だからこそ現代を舞台とした撮影の臨場感が透ける画面の空気など、統一性と一貫性をもっているからこそ予算の限りを感じてしまう作品だった。


靉光をモデルにしたこの作品は、年始から三船敏郎さんが登場する昔の作品や山形国際ドキュメンタリー映画祭から選出されたドキュメンタリーを立脚点に観比べると、リアリティに欠けており、魂を込めた人間性や芸術家の苦悩を感じられる映画にはなっていない。判断基準はもちろんそこだけではないが、登場する役者の演技の穏やかさや、アクションに対する神経のまどろみがあり、正直言えばやや物足りないものとなっている。


ただ前半のコラージュを含めた撮影技術にはおもしろさがあり、時にはカメラアングルが平凡でどうしても予算の関係で作り込めない衣装の作り物っぽさが浮き出てしまうものの、家屋の入口を映して斜光する構図や、ふすまを背景にした人物の立体感など良い質感が切り取られていて、編集を含めて優劣がジグザグする印象があった。


それでも池袋モンパルナスを中心とした戦時中の芸術家の時代の空気は感じにくく、脚本はそれほど胸を突いてくるところもないので、演技の存在感の乏しさも含めて映画作品としての個性は目立つところは少なかった。


とはいえ、広島県立美術館で作品を観たことのある画家の生涯の一片と創作に対する苦悩と信念は伝わってくる。中国への出兵でも画業に対する思いは吐血を画材として表現され、苦労をかけたこれから報いていくはずの愛妻への思いも観るべきところがある。


結局映画の出来不出来ではなく、靉光そのものの存在を感じさせることはできている作品になるのだろう。

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