2月21日(日) 広島市東区東蟹屋町にある広島市東区民文化センター・ホールで「小林愛実 ピアノリサイタル」を聴く。
広島市東区東蟹屋町にある広島市東区民文化センター・ホールで「小林愛実 ピアノリサイタル」を聴く。
ピアノ:小林愛実
ショパン:ポロネーズ第7番 変イ長調Op.61「幻想ポロネーズ」
ショパン:バラード第2番 ヘ長調Op.38
ショパン:ワルツ(19曲)第5番 変イ長調Op.「大円舞曲」
ショパン:アルデンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズOp.22
ショパン:24の前奏曲Op.28
アンコール
ショパン:即興曲第4番 嬰ハ短調
ベートーヴェン:ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調 第1楽章
今日の演奏会は抜群に良かった。経歴がすでに物語っていたにしても、全曲暗譜で弾きこなす小林愛実さんはショパンと同化していて、歴史の深さよりも、時間との密度が語られていた。
ショパンは苦手と豪語していたのはもうはるか昔のことで、今ではノクターンを好んで聴くほどになっている。そんなショパン初心者の自分にとって、今日の演奏会は作曲家の色々な心の面と、繰り返される内面の吐露を知る内容となっていた。
小林さんのピアノはショパン専門と思えるほど違和感なくフィットしていて、素早いパッセージの疾走感と淀みない音色の流れは飛び抜けて良かった。良点は無数に煌めいていて、低音部のハンマーのような和音の強さも細い体が瞬発力を全身で駆使して打ち鳴らされており、響きは寸分なく轟き渡る。
紛れもなく恵まれた才能を授かっており、しなやかながら強さを持った指の動きからして特別な身体能力を持っている。暗譜する頭は反復によるものかわからないが、全曲を頭に入れて楽譜に神経を奪われずに集中して弾く姿からして、努力の成果があるにしても、並の人間にはとても到達できない域に達している。
持っている音源の流し聞きではわかり得ないショパンの心が豊かな表現力で再現されており、ポロネーズやワルツにこれほどの喋りがあったのかと驚かされた。特にアルデンテ・スピアナートと華麗な大ポロネーズは協奏曲のようなスケールの大きなピアノの表現が詰め込まれていて、これほど良い曲なのかと驚き唸った。
そして後半の24の前奏曲は、複雑となっている。純音楽よりも作曲家本人のナイーブな独白のようで、気まぐれよりも分裂気質がおさまりきらずに、わずかな休息なく感情の波に苛まれている印象さえ受けた。
アンコールは幻想即興曲で、聞き慣れたこの曲そのものの良さを初めて知るようで、次のアンコールでベートーヴェンが始まると、ひさしぶりに心身から震えた。
背筋の伸びた端正な姿勢が弁じるように、颯爽として変に揺れない正統なショパンとなっており、音色の細やかさと粒の美しさのさらなる奥へと神経は通っていた。本当に素晴らしいショパンの演奏会を味わえて、心から嬉しくなる午後の一時だった。
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