2月14日(日) 広島市中区土橋町にある花店「SHAMROCK」で「桑原雷太 ポートレート撮影イベント」に参加する。
広島市中区土橋町にある花店「SHAMROCK」で「桑原雷太 ポートレート撮影イベント」に参加する。
バレンダインデーの自分の贈り物と前置きすれば、内蔵まるごと吐いてのたうち回るほど気持ち悪い第一印象を与えることになるだろう。
自分自身をつかまえてもらう為に「SHAMROCK」さんへ行った。前回ここで桑原雷太さんと「SHAMROCK」さんによる展示を観に行ったあとに、ふと、二十歳を過ぎて初めて写真を撮ってもらいたいと思って再訪したが、タイミングは合わなかった。
インスタグラムでフォローしている桑原さんの写真が実際に会って知る人の中で最も好きだ。ブライダルの前撮りの写真も厳密な構図と静かでポジティブな表情が良いのだが、過去に長期旅行した自分としては世界の国々に写された作品に魅了される。絵画と異なり、写真を観る基準に表情がある。とても上手に料理を撮る人も、ただ料理が美味しそうに見えるだけでなく、形象が持つ一面をその人の感性で映し出している。そのように桑原さんの写真は一つとして無駄で退屈な物はなく、人物の表情とポーズに豊かな物語が包含されている。
朝の二番に行ったおかげでそれほど待つことなく撮影してもらった。機械の中でインスタントに撮影されたり、列に並んで無愛想な顔で撮られたりする他に、丸坊主にスーツを着て就職の為の写真を写してもらったぐらいしか経験がないから、ポートレート撮影がこれほど楽しいとは思わなかった。もちろん、はっきりと間断なく盛り上げる声をかけてくれる桑原さんの主導によるにしても、右向いたり、首をねじったり、顎をひいたりする動作が楽しく、自然なポーズではあるものの、一度の大笑いのあとにすこぶる表情の柔らかくなる自分を感じたりする。
「SHAMROCK」さんに選んでもらった自分に合った花は、バンクシャーという名だった。見たことはあるが名前の知らなかったアザミのような花は、まずバンクシーの壁画が浮かび、「トウモロコシですか」、というおかしな質問をつい口にしたように、フォークナーの「響きと怒り」も思い出された。自分はこのギザギザした葉をうねらせる花を持ったが、山火事に触れて発芽するという過酷な環境下で形成された植物に通じる性質はあるのだろうか。
今回の企画は今後展示作品にも使用される写真ということで、この日は写真を受け取らず、来週までには自分のもとに届くらしい。おかしなもので、楽しい写真撮影だけで満足するほどの内容だったから、実際にどのように写っているか気になりはするものの、仮に見られなくても、それはそれでいいと思えた。
観光地でも人との集まりでも、自分の写真は関心がない。自分から撮ってもらうことなど一度としてしたことはない。今回こうして初めて生まれた欲求は間違いなく、良く撮ってくれるだろう、自分では見つけられない本質の一面を切り取ってくれるだろう、そして、格好良く自分を残したいという気持ちが集合して動いたのだろう。とても珍しい機会をもらえたことに感謝だ。
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