12月24日(水) 広島市中区堺町にある和食店「野趣 拓」のヤシュタッキーディープフライドチキンを食べる。

広島市中区堺町にある和食店「野趣 拓」のヤシュタッキーディープフライドチキンを食べる。


ヤシュタッキーディープフライドチキンの予約を聞いたのは一週間以上前のことで、正統な日本料理店のイメージを持つ「野趣 拓」さんがチキンボックスを販売するのは意想外ながら、すぐに飲み込めたのはまず素直な食欲に、次に猪キーマカレーで、そしてそれにまつわるラーメン博士や豚乳の発想があるからだ。


いったいどんなフライドチキンなのだろうか。ほとんど想像せずに目の前にしたボックスは丸く、赤いちゃんイカのステッカーと並べればクリスマスカラーになる緑を下地に、大将の笑顔がはじけている。とても愛らしいデザインだ。


開けるとフライドチキンがたっぷりだ。意外なドライブよりもストレートに走るチキンは大きく、大将と店の印象通り油切れがよく中は柔らかジューシーだ。フランチャイズの白髪店のチキンも嫌いではないが、部位によってはパサパサするギトギトの衣とはやっぱり違う。細い骨の二本ある素揚げの皮は香ばしく、レンコン入りの鶏つくねのメンチカツに料理人としての腕前が見え、タンドリーされた手羽元は敷かれた菜々とすこぶる合う。そう、このスパイス使いが懐の広さだ。そしてここにポテトではなく、くわいのあるのがたまらない。


年々我が家のクリスマス行事は衰退へ向かって行くものだと思っていたら、なぜか今年はにぎわいを見せている。ビールを飲みながら手を肉と油で汚し、大きいケーキは日をずらして、この夜はモントリオールベーグル屋さんと西条のタフネスパン屋さんのシュトーレンを食べ比べる。そして締めには酒に合う燻製のチーズケーキだ。


各国はクリスマスどころではなく、アメリカではかさばる樅の木の配達の多さがワクチンの輸送を逼迫しているなんて聞く。日本は比べればはるかに平和にあり、大将のステッカーの笑顔同様に、どんな状況でも笑う余裕を持ちたいと思えるほどゆとりがある。


おいしいフライドチキンにただ騒ぐのではなく、慎みを持って考えるくらいのクリスマスイブは、やはり家族の関係を軸に誰かとのつながりに想いが向くらしい。そんなときは、チキンにおもいきりかぶりついて、さっぱりしたいものだけれど、そうもいかないむずかしい世の中だ。

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