11月29日(日) 広島市中区流川町にある中華料理店「圓縁園飯店」で食べる。

広島市中区流川町にある中華料理店「圓縁園飯店」で食べる。


耳ではなく、腹を疑う言葉がある。「時喰 一具」さんの柿ですっきりと締め終わり、遅くならないうちに帰宅すると思いきや、新天地公園で「中華が食べたい」と言い出した。またか、数日前に「醸 はせべ」さんで食べたあとにも言い出し、その時はなんとかおさえこんだが、今日は意志が強い。あれだけ食べて満足しているのに。もう食べられないと文句を言いながらついていき、「圓縁園飯店」に入った。


麻婆豆腐、酸辣湯、担々麺、どれがいいと言い出す。ラーメン一品で済むと思いきや、二品か三品注文するつもりらしい。変にアルコールを飲みたくないので自分はウーロン茶を選び、麻婆豆腐は次の日に響きそうなので、残りの二品にしてもらう。


ウーロン茶はトマトの甘さを感じる爽快な味で、ビールにしないで良かった。酸辣湯は胡椒が相当量散らばり、辛く、やはり酸っぱいが、ちょっと胡椒が強すぎるようだ。担々麺は芝麻醤が濃く甘く、とても美味しい。


もう入らないと言いながら少しもらい、食べ終わると、スマホをつつき出す。どうやら仕事らしい。しかしタバコの煙がところどころで立ちはじめ、店内はすぐに雀荘やパチンコ店の様相となる。


せっかく「時喰 一具」さんで気分良く終わったのに。苦手な煙に燻されて癇癪を起こすと、険悪な雰囲気となり、「先帰っていいから」と言われる。


昔からあるおなじみのパターンだ。もう百度には届いたやりとりだろうか。しかしここで帰れば互いに恥となる。いや、自分に恥が残る。煙に我慢できず形相をひどいものにしながらも、なかなか減らない前に残ったコップのビールを自分が飲み干し、どうにか帰る。


「時喰 一具」さんのあとにすっきりと帰ればいいのに。得意の小言で自分と相手をくどくどと濁しつつ、家に帰れば何事もなく終わるから、互いの怒りとパターンは単純だ。長い旅行では毎日のように繰り返されていた闘いだが、時たまならば嫌に残ることもなく、煙のようにすぐに消えて、臭いがどこかにこびりつくこともない。


何にせよ、美味しい担々麺を口にできたのは事実だから、自分でしない無理があるからこそ誰かと一緒にいる意味はあるのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る