11月23日(月) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで森川時久監督の「夏少女」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで森川時久監督の「夏少女」を観る。


1995年(平成7年) あびプロダクション 90分 カラー 35mm


監督:森川時久

脚本:早坂暁

撮影:東原三郎

照明:三荻国明

美術:竹内公一

録音:本田孜

音楽:桑原研郎

出演:桃井かおり、間寛平、矢崎朝子、藤岡貴志、景山仁美、朱門みず穂、高原駿雄、川上夏代、坂田明


子供への焦点が大きく、原爆と原爆症について扱われるとなると、教え伝える意味合いが中心にあるように思えてしまうが、夏に上映されそうなこの映画は直接の解決を持たず、中盤から登場人物に対して多義が膨らんでくる。


まだ訪れたことのないロケ地である蒲刈島はとても美しく、水彩画で海の反照を観た記憶はロングショットでの夕日の風景と合致して、海に潜るシーンには夜に観た夢で潜水したことが思い出された。


昭和と勘違いするこもった画面の色合いが叙情的で、海の濃いブルーが多くを物語るように発色している。桃井さんの演技は最近観た姿と異なり、緊張に強いられてせっかちに動き、重さと緩さよりもヒステリックな早さを持ち、実際映画の中で何度も駆けるシーンが登場する。


間寛平さんの演技は見た目でもはや説得力を持っているようで、酒に酔って弱る姿がそのまま似合い、寝ころんでラジオ体操をするシーンは芸人らしい面白さがある。


少女に多くが象徴されれば、日傘を差す大人の女性にも同様の次元が示されて、母と娘の関係は堕胎された子供も混ざり、これという明確な接点をつけない。島の人には見えず、特定の人にだけ確認できる少女はただの幽霊ではなく、ラストでの問いかけでも言われるとおり実体化が強く、衣類の扱われ方も含めてどっちつかずの存在となっている。


子供向けの映画と前半に思いこんでいたが、速度を持ったショットや恐れを抱かせる演出もあり、青い海と赤いワンピースが対照する。


扱われる題材は原爆の悲劇だが、一面的にならない複雑な展開を見せていて、答えを見い出せずに生きる人達の複雑な思いは決して落ち着くことはないと感じてしまうように、色と想いが錯綜する作品となっていた。

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