11月5日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでセルゲイ・ボンダルチュク監督の「人間の運命」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでセルゲイ・ボンダルチュク監督の「人間の運命」を観る。


1959年 ソ連 101分 白黒 Blu-ray 日本語字幕


監督・製作:セルゲイ・ボンダルチュク

原作:ミハイル・ショーロホフ

脚本:ユーリー・ルキン、フョードル・サヤフマゴノフ

撮影:ウラジミール・モナホフ

音楽:ベニアミン・バスネル

出演:セルゲイ・ボンダルチュク、ジナイダ・キリエンコ、パーヴェル・ボリスキン


ショーロホフの原作を知らないので、映画作品そのものから物語を知れるのは都合が良いだろう。あれこれ事前情報に考えを預けることをせず、モノクロのキアロスクーロが美しい画面とかすかにこもる録音に気分は浸っていた。


数日前に観た映画より製作時期は早くても、すでに空爆による強烈な演出は萌芽しており、戦車と飛行機も含めた銃火器を使用した戦闘シーンの迫力は高いレベルにある。固定された人物たちをパンショットで捉えるなどカメラを移動させる撮影が目につき、鳥の声や水の音などタルコフスキー監督の映画を想起させる背景音の使用などの関連だけでなく、大人数を列車にはみ出るほどすし詰めにして、別れで見送る人々が手と帽子を振る姿はエイゼンシュテイン監督ともつながり、紛れもないロシア映画の影響を強く感じる。


絵画的な人物配置の構図が美しい中で規則的な人物の動きが混ぜられていて、列車を使用しての兵士と兵器の移動は質量に驚かされる。幸せだった家族との時間は前半にさっと流され、続いて中盤の捕虜生活が続き、待つ人のいない終盤に至る展開はややエネルギーが消えていくようではあるが、各ショットの持つ存在感だけで見応えがあり、ドイツ兵に詰められての朽ちた教会での美しいシークエンスや、忍苦が続く石積み作業の長回し、そして晩餐での一気飲みの緊張感など、記憶に残る要素は少なくない。


少し前に独ソ戦争についてウィキペディアでざっと調べたが、その中で互いの国の捕虜の扱いの悲惨極まる内容が記述されており、そのまま鵜呑みするわけではないが、飢餓状態の中で酷使されて死亡する内容はこの映画が証明するようだった。


音楽はショスタコーヴィチではなかった。プロパガンダらしい政府からの影響も感じさせる作品だったが、まだまだ続くボンタルチュク監督の上映会が続いていけば、その個性の連関を次ぐ次と知れることだろう。しかし主演も監督もボンタルチュクとは、並外れた映画人の能力ではない。


砲火と忍苦、四日前に観た作品同様、決して生やさしい作品ではなかった。

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