10月24日(土) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで降旗康男監督の「駅 STATION」を観る。
広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで降旗康男監督の「駅 STATION」を観る。
1981年(昭和56年) 東宝映画 131分 カラー 35mm
監督:降旗康男
脚本:倉本聰
撮影:木村大作
美術:樋口幸男
音楽:宇崎竜童
録音:田中信行
照明:望月英樹
編集:小川信夫
出演:高倉健、いしだあゆみ、岩淵建、名古屋章、大滝秀治、八木昌子、池部良、潮哲也、寺田農、烏丸せつこ、根津甚八、宇崎竜童、北林谷栄、永島敏行、田中邦衛、平田昭彦、鬼雷太、小林稔侍、橋本功、中園めぐみ、倍賞千恵子、阿藤快
最初のシークエンスだけでいしだあゆみさんの去ってしまうのが残念でならないこの作品は、前半は追憶のように場面場面が叙情的な音楽と共に配置されて、目立った繋がりを見せずにいくぶん物語に置いていかれる気がするのは、メキシコオリンピックの射撃のストーリーや、戻ってこない母子の話をこちらが勝手に膨らませてしまうからだろう。
それぞれの場面で物語はあるが、決定的な筋を作る要素を持たず、小品集のようにまばらなまま展開していくと、倍賞千恵子さんが登場して一気に血が巡り出す。それは高倉健さんだけでなく、この作品そのものに生彩と生命が注がれるようで、実際ここを基点にばらまかれていた前半の諸々は解決へと結ばれ始める。
雪景色や北海道の自然を伝えるショットや編集はあるがどことなく親しみやすく、画面に決然とした存在感を持った際立ちはないのだが、基本として雪が体に冷たく染みて心の温度を感じるようにできている。吹雪や荒波も情感豊かに響いてくるが、なにより心に触れるのが健さんと倍賞さんの対面する酒場での一時で、「幸福の黄色いハンカチ」を思い出させる首の黄色いスカーフが目にとまり、虚構の世界ながら現実のような邂逅に幸せの拍手を送りたくなる二人の演技が色っぽく対話している。
端役も豪華に細部を飾り、武田鉄矢さんのカメオ出演も贅沢な笑いを引き起こすが、拳銃という武器に刑事という職業の苦悩が全編を通して問いかけられ、最後には食い違いこそ男女の関係という理屈と道理ではない一致を提示されて、健さんの表情と皺はより深く刻まれるようだった。厳しさの中に心休まる暖かさがあるようでも、宿命のように刑事に戻っていく姿が痛ましく、寡黙に描かれていた。
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