10月15日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで神代辰巳監督の「青春の蹉跌」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで神代辰巳監督の「青春の蹉跌」を観る。


1974年(昭和49年)東京映画、渡辺企画 84分 カラー 35mm


監督:神代辰巳

原作:石川達三

脚本:長谷川和彦

撮影:姫田真佐久

音楽:井上堯之

美術:育野重一

編集:山地早智子

録音:原島俊男

出演:萩原健一、桃井かおり、檀ふみ、河原崎建三、赤座美代子、荒木道子、高橋昌也、上月左知子、森本レオ、泉晶子、くま由真、中島葵


萩原健一さん演じる主人公の内面は表立って描かれないが、「エンヤトットエンヤトット」がテーマ曲となって若さが切羽詰まって重く感じるからこそ、挿入される別の音楽が痴呆のように白々しく聞こえる。


手持ちカメラによる接近や振れもあり、整然とした構図よりも生々しさが画面ににじんでおり、ふと、ゴダール監督の古い映画で感じたような若者同士の行動に空虚を覚えた。安保闘争も主人公の人格形成に関わっており、学生が中心として世相を彩っていた時代にベビーブーマーの熱気が藻掻くように見えてしまう。


ミニスカートが風靡した一時を自分は知らないが、この時代の作品に接するごとにポルノという文化が写真や劇場に浸透して、映画も同様に裸のみせ方にこだわっていたのだと教えられるようで、アダルト雑誌や深夜のテレビ放送ではなく、ゴールデンタイムでさえ惜しげもなく女性の胸をさらす源泉を旧体制の反動の流れだと知るようだ。


萩原さんの演技もつかみどころなくていいが、湿っぽい桃井さんの女性像がことになまめかしく、終盤の滝に落ち込みそうなシークエンスに恨みの盛りあがるところは、ただ従うだけでない穏やかな女性の気だるさがまさにしがみついてくる。


台詞をのせる声音がべったりしている。こういう性格を見ると、俳優それぞれの持つ時代の個性も新鮮だったであろうと想像された。

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