10月11日(日) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでキム・ヒョンソク監督の「セシボン」を観る。
広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでキム・ヒョンソク監督の「セシボン」を観る。
2015年 韓国 122分 カラー Blu-ray 日本語字幕
監督・脚本:キム・ヒョンソク
音楽:イ・ビョンフン
撮影:イ・モゲ
出演:チョンウ、ハン・ヒョジュ、カン・ハヌル、チョ・ボンネ、チン・グ、クォン・ヘヒョ、キム・ユンソク、キム・ヒエ、チャン・ヒョンソン
まさに夢を見られる映画作品だった。青年に限らず、中年男性でも恋することを逃れられないほどの愛らしさを振りまくハン・ヒョジュさんがキャスティングされていて、先鋭的なファッションモデルのような造形的な美よりも、日本の女性雑誌でノースリーブのニットが似合うような顔立ちだが、相当に可愛い。主人公を呼ぶ「オ・グンテェェ」という台詞がどれだけうらやましいだろうか。すぐに激しい性行為へ発展する西洋の男女関係と異なり、昨日までの映画ならば裾丈の長いチマからふくらはぎが覗けたり、レースの下着のようなソッチマが見えることを恥じらいとする昔の文化があり、この作品でもビートニクが色濃く若者を浸食して極端なミニスカートが女性達に履かれていても、男女の付き合いは一歩引いた青い健全さであるからこそ、東アジアらしい距離感で胸を突いてくる。
前半から素直に展開が進み、その淡く輝かしい男女関係が光るからこそ後の悲哀は予想されてしまい、とても現実とは思えない見るからに高嶺の花と親しんで、ポップな笑顔を何度も見せるからこそ、やるせなくなる。物語は歌詞に先取りされていて、心を奪う詩がギターの音色に歌われると、よどみない感性がさまざまに変化する若い気持ちを代弁して、資産運用や退職金などまず考えもしない今の一時のかけがえなさが切なく流れる。
やはり物語はうまくいかず、別離後もすこし先の展開を見せて想像だけに任せない優しさも脚本は与えているものの、当然取り返しはつかない。だからこそ意味が深く染み込む時間の経過を感じさせる。あまりに愛らしく見守りたい二人の関係だったからこそ、純愛がそのまま引き裂かれた無情な運命に、人生は望み通りには運ばれないなどといえば、枯れた人間の心持ちだろう。
若者は夢を現実に見ることはできるが、それを過ぎてしまえば過去の夢として現実は二度とやってこないと年長者は思うだろうか。疲れやすく、肌も汚くなってしまったが、それでも夢を現実に重ねことは可能で、それができなくなれば、一体人生に何を見ればいいのだろうか。
年相応の夢があり、歌はある。あまりにハン・ヒョジュさんが微笑みを放っているので見事な青春として表現されたこの映画だが、生きていれば老年はある。そこに何が置かれるか、そこまでの過程と結果に何を用意するか、つい感慨深く考えてしまう作品だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます