10月10日(土) 広島市中区加古町にある広島文化学園HBGホールで「広島交響楽団第404回定期演奏会」を聴く。
広島市中区加古町にある広島文化学園HBGホールで「広島交響楽団第404回定期演奏会」を聴く。
指揮:現田茂夫
ピアノ:河村尚子
コンサートマスター:佐久間聡一
モーツァルト:歌劇「ツァイーデ」序曲(交響曲第32番ト長調)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調
シューベルト:交響曲第7番ロ短調「未完成」
アンコール
シューベルト:ピアノ・ソナタ13番 第3楽章
シューマン:トロイメライ(弦楽合奏版)
延期された公演や他のコンサートを含めたにしても毎週演奏会へ足を運んでいるようで、県外に出ることなく中区だけでこれほど音楽を楽しめるのだから、広島市内はプロによるクラシック音楽に恵まれた環境だ。
現田茂夫さんの指揮によるモーツァルトの曲は、交響曲としても知られているらしく、たしかに序曲らしい尺ながら三楽章分味わえる展開を持っており、細い弦の旋律に研ぎ澄まされた美しさが奏され、モーツァルトらしく無駄のない極めて美しい構成のなかで音色は流れていく。それでいて気分を高揚させるクレッシェンドもあり、甘美な緩徐楽章らしい箇所では様相を変えた穏やかなメロディーが響き、傷のない作品は音楽の美を宝石のようなカッティングで光らせている。
プロコフィエフのピアノ協奏曲が記憶に残る河村尚子さんのベートーヴェンは、今日も最前列の席に座っているので音色の比較から始まった。肩の力の抜けた音が響き、堅さや衒いのない枠の広い表現は、前回も印象に残る素敵な笑顔がそのまま気質に表れているようで、素早いパッセージは疾走感を持ちながら粒は澄んで美しく、低音では時に強く響かせて瞬発力の高さを垣間見せると、高音部の柔らかな音色はスポンジで歩くようで、柔と剛を感じさせるのは技術の高さと運動神経の良さを併せ持った単純な強さが基本にあるからだろう。第一楽章のカデンツァの造形力は見事な波を持ち、第二楽章では必要以上にナイーブにならず、第三楽章の多様な表現には舌鼓を打つほどだった。そしてアンコールでは持っている力で存在感を表し、多彩なタッチを生む明るい心の豊かさを感じてやまなかった。
シューベルトの交響曲は、重厚な音色と足取りによる荘厳な雰囲気が進み、第一楽章には宗教性を持ったリズムを強く感じた。高らかに金管楽器が鳴り、荘重な弦の響きは深刻な託宣のように感じることもあれば、チャイコフスキーの曲のような悲痛な叫びも聴こえるようだった。第二楽章は墓場にいるような実感を覚え、忘れ去られる時と静けさに安らぎがあるようで、メメント・モリという言葉が何度か頭をよぎった。どうしても死の香りが漂う音楽として聴こえてしまい、曲の中での明るい響きは救済や解放をイメージするようで、曲が終わると続きを持ってしまう姿勢が残り、やはり未完成だとつくづく知らされた。
シューマンのトロイメライで優しく演奏会は閉められた。ちょっと体調がすぐれず音楽を感受できずにいたが、その中でも良いだろうと気づける箇所は多くあり、それらから集中して情感を得られなかったのは残念だったが、聴きに来ている人にとっては良い演奏会になったのだろうと、冷静に残るような音の記憶に想像した。
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