10月4日(日) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでギィ・ジル監督の「地上の輝き」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでギィ・ジル監督の「地上の輝き」を観る。


1969年 102分 カラー・白黒 Blu-ray 日本語字幕


監督・脚本:ギィ・ジル

出演:エドウィジュ・フィエール、アニー・ジラルド、パトリック・ジュアネ、エリナ・ラブルデット、ジャックス・サネッティ


たった二作で何かがわかるわけではないが、脚本よりも映像美に重きを向くようで、バランス良くその感覚を兼ね備えていないからこそ惹かれるところがあるのだろう。


細切れのカットはあまりにもバラバラにつなぎ合わされていて、昨日の作品同様に多用される音楽も組み合わされると、モンタージュよりもコラージュという言葉に当てはまる作品だ。決してドキュメンタリーではないだろうが、私小説らしい容貌を持つ内容は特に変わった物語を持たず、言ってしまえばただ生まれ育ったチュニジアを訪れるだけの話だが、映像の組み合わせで懐古に詩情が伴う。ただ昨日ほどロマン溢れる夢の映像美にはならず、いくぶんうるさいと思えるほどの音楽と画面の組み合わせは、落ち着きよりもせわしない構造となっている。演技よりも構図と流れを重視した内容は、巧みなカメラの使い方によって様々に調子を変えており、斜め上からのズームで表情をつかまえるショットが存在感を示すなかで、分裂ながらレイピアで鋭く感受性を突き刺すシーンがいくつもある。


パリのガイドから導入される冒頭からセンスは光っており、気取りは常にあるかもしれないが諧謔は至って少なく、貴族気取りのナンセンスな物語ともとれるのは、チュニジアというコロニーに対しての支配者階級の感傷がさまよっているからだろう。それはパリからチュニジアへ舞台は移り、カルタゴ遺跡に近いシディ・ブ・サイドという場所で多く物語が映されているように、日本でいう軽井沢での有閑層のノスタルジーとロストは、一般大衆や肉体労働者にとってはほど遠い現実で、高層階のマンションで友達がいないと嘆くほどに、贅沢な悩みという暇人の感慨ともとれるだろう。


とはいえ、それぞれの住む世界は異なり、脚本に目立ったところがなくても、映像は常に綾に組まれている。特に後半で、訪れた家でのギターと歌の一幕から、両脇の緑に囲まれた道を抜けて外の門に向かい、二人の子供が決闘ごっこをするシーンは、言葉ではない強烈な情感が突き上げてくる。


常に世界は一方的であり、一面的に物事は進んでいる。あらゆることに配慮することは必要でも、頑固に凝り固まった考え方にも面白味はある。時と記憶を求めるこの物語は、あまりにナイーブかもしれないが、決して悪く汚いところは見あたらない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る