9月25日(金) 広島市中区本川町にある日本料理店「季節料理 ながせ」で飲んで食べる。

広島市中区本川町にある日本料理店「季節料理 ながせ」で飲んで食べる。


映画を観て家に帰ったら電話があり、「季節料理 ながせ」さんに行くというので、脱いだ靴下を履きなおし、歩いて店へ向かった。どうやら今日は忙しかったようで、出汁を口にしたいらしい。


賑わう店内は忙がしそうだが、急な対応にも快く受け入れてもらい、カウンター席に座る。少し食べて飲んで帰るのかと思いきや、基本のコースを頼んだから驚いた。空腹ではあったが、一昨日美味しく食事したばかりなのに、さすがの食欲だ。


いつも通り冷たい日本酒で乾杯してから、7品ある前菜を口にする。どれも心休まる味で、貝好きにはたまらない生姜の染みた巻き貝の隣には空芯菜が鰹節をまとい、黄色い器にとじこもる金時草も違った葉物のありがたみを感じる香り良さがあった。


サワラのタタキは塩と醤油の二通りで食べ、ほ乳類に負けない脂を何度も噛んで味わうと、次は西京焼きで、旨味の染みこんだ同じ魚と思えない仕上りに驚く。知ったカラーのトマトは中心に辛みを持った味わいで、芋の上品な甘さに、ハスイモとキュウリの酢の物がさっぱりして、豆は旨味がたっぷりだ。


出汁にたたずむがんもどきが出ると、疲れが癒されているようだった。未来を予期する能力があるらしく、この店に来た理由がこの器に澄んでいて、女性の直感は時に神がかっていると美味しそうに証明されると、銀杏や枝豆を持った暖かさが夜の冷気を防いでくれるように身に染みた。


エノキダケを抱いたサーモン、マイタケ、イチジクの天ぷらのさくさくした食感と熱を逃さないよう塩を急いで口に終える頃には、燗の日本酒も二種類目だ。すでに酔いがまわり、人の話も耳にそらぞらしく入ってしまう。


前回忘れたカレーをしめに食べると、ここでも二色のトマトが甘みたっぷりに大活躍していて、あとからちょっと来たお客さんの食欲を香りで引きつけていた。


10月から始まるスタンプラリーのイベントと、昔の研修旅行の話も聞いていたが、その時はすでに頭がしっかりしていなかったらしい。占い同様にスタンプ集めにもてんで興味がわかないので、今年はさぼっていても御朱印集めの好きな人が1枚カードを持てばと言えば、帰りにトイレのドアに張られているそのイベントのチラシにつられて出口をうっかり間違えてしまう。


そのまま便所に流されてしまいそうなほど、たしかじゃなかった。もうすこしだけお酒に強ければいいのにと、近所からの帰り道の空鞘稲生神社神社あたりでふらふらした。

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