9月16日(水) 広島市安佐南区毘沙門台にある喫茶店「赤い屋根」で紅茶を飲む。

広島市安佐南区毘沙門台にある喫茶店「赤い屋根」で紅茶を飲む。


寄りたい店があったので、前回「cafe DUSTY ARTS」からの帰り道に見かけた「赤い屋根」に入ってみた。ここは金、土、日が休みなので、代休を使った今日はちょうどよい。


階段をあがると、年月と趣味の良さに満ちた空間だった。二面の窓の開かれた部屋には香取線香がゆらぎ、苦手な冷房なく自然に音が響いている。虫の音、ダイヤトーンのスピーカーから丸みのあるクラシック音楽、そして掛け時計のコチコチした音が永遠に続く。山の下からどこかの学校の吹奏楽の練習も聴こえ、ティーカップを小皿に置く音は自分で加えることができる。白いモルタルらしい壁には聖人のステンドグラスが填められていて、もう過ぎたはずの蝉の声はツクツクボウシが戻っている。天井からピンクの縁の傘がテーブルに下がり、ニスで光る焦げ茶の調度品を照らす。


熱い紅茶を飲み、ただ座って文章を書く。久しぶりに意味ある時間を味気ある虚無の中で過ごしてると、まるで汽車のように掛け時計が16時を告げて響かせる。


訪れた人達の思いを窓際で手に取り、思いにふける。時の重みのなかで、甘い感慨に襲われる特別な場所だった。

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