8月16日(日) 広島市中区本川町ワインバー「Au Bon Coin ~広島ワイン食堂~ 」で飲んで少し食べる。

広島市中区本川町にあるワインバー「Au Bon Coin ~広島ワイン食堂~ 」で飲んで少し食べる。


ふと、その価値に気づく時がある。坊主頭をやめてから他人に髪の毛を切ってもらうようになり、2度訪れたことのある店があった。そこは街の中心部にある美容院のような高い値段ではなく、とても良心的な価格で散髪してくれるルイ・アームストロングの流れるお店だった。目立った不満はなかったが、より安さと手軽さを求めて1000円プラスで切ってもらえる各店に通っていたら、最近、閉口するほどの仕上がりになった。すると、うすうす感じていたが、最初に行ったあの店が頭に浮かび、どうして離れてしまったのかと思うよりも、あそこへ再び行こうと決めた。


そんな具合だろうか、ふと、近所にある「Au Bon Coin ~広島ワイン食堂~」さんに寄った。最近立ち飲み屋に行くようになり、今まで経験したことのなかった生活スタイルができあがると、夜の飲み歩きをしなかった初心者の自分にも、どのように飲むのかほんの少しわかった気がした。型のあったあの横綱は強かったが、大鵬は型がなくて強かった、そんな解説を落語のマクラで聞いて、飲み歩きにも自分の型ができると、お店を楽しむことができるのだろう。


思えば広島に引っ越してきて、一年も経っていない頃に初めて入店してからは、頻繁に行くのではなく、時折ふらっと顔を出すくらいだった。それがに今になって、「Au Bon Coin」さんがどんな店かいまさら思い知るような気分だった。最近は酒も食も細り、大量に買った家の醸造酒や蒸留酒がいっこうに減らず、どのように飲んでいけばよいのかと頭をパシパシ叩くほどだ。そうなると量よりも一回の質に目が向き、外で一杯飲んだり、少しつまむぐらいがちょうど良くなる。それは家に在庫を抱えて物々に悩むよりも、持ち物少なく、自由に外を動く楽しみを得たような開放感だ。


そんなわけで「Au Bon」さんでミックスナッツと一緒に赤ワインを飲み、すこし話をして帰った。今日観た「ニュー・シネマ・パラダイス」では三十年の時を経て主人公は帰郷したが、それと比べるには甚だしく、また違っているにしても、いろいろな店を回って気づく事がある。カウンターで隣のお客さんが口にした言葉は家庭の食卓を生み出す場所を意味していたが、近いからこそ遠回りすることはやはりあり、これからどうこう決めるのではなく、新しく良い価値と位置に気づいたからこそ、成長と言っていいかわからないが、自分の変化を好意的に知ることになった久々の来訪となった。

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