8月9日(日) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで大澤豊監督の「せんせい」を観る。
広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで大澤豊監督の「せんせい」を観る。
1983年(昭和58年) 映像企画 103分 カラー 35mm
監督:大澤豊
原作:坂口便
脚本:関功
撮影:山本駿
音楽:佐藤勝
美術:永沼宗夫
録音:高木勝義
照明:山本嘉治
編集:吉田栄子
出演:五十嵐めぐみ、宮崎靖雅、湯沢紀保、藤森政義、河野正明、栄正議、矢野和朗、志喜屋文、斉藤とも子、中原早苗、麻志奈純子、西川ひかる、亀井光代、立石涼子、河原崎次郎、赤塚真人、長門勇、曽我廼家五郎八、小池朝雄、北林谷栄
黒いライダースらしいジャケットにジーンズという、オープニングの後ろ姿から五十嵐めぐみさんに惹きつけられる映画だ。男らしい行動力の中に女性らしい優しさが最初から溢れていて、活気のある大らかさは、快活こそ誰からも愛される気質だと知らされる。
長崎という土地柄が強く映し出された作品で、方言の温かみは「よかよか、おいどんのがある」とトンビの卵を見せる太い男の子の心意気にあり、ところどころ置かれる「ばってん」という言葉の他に、時折聞き取れないほどのなまりが人と人の親しき間柄を実感させる。そこに海辺の荒れた自然を持ちながら太陽と緑が輝かしい長崎を美しく照らし出し、まだ訪れたことのないこの異国らしい雰囲気を持つ遠い土地に、特別な情感を持たされる。光は夏らしいのだが、長袖を着る服装にまだ春らしいことを気づかされたり、ちょっとした違いが関東あたりとまるで異なる風土を抱かせる。
鑑賞しながら、吉田拓郎さんの「夏休み」の歌詞が何度も頭に流れるほど、五十嵐めぐみさん演じるせんせいはきれいで、いなくなってしまうことが悲しく思われる。ムンクらしい画風の先生の絵が魂を吸い取ったという感想が終わり近くに漏らされるように、せんせいの部屋が最初に映し出された時からムンクの絵が死を暗示している。それは、病める子の寓意であり、元気で強く生きていながらもどうしたって死への弱さは誰にも訪れることを象徴しているようだ。
子供たちの演技はみずみずしく、北村さんや長門さんらの端役もとても味わい深く、五十嵐さんの演技はせんせいの明るさを輝かしく放っている。それはムンクの絵の、烈々に照射する太陽のまぶしさを持っているようだ。
原爆の悲劇を後世に伝える役割をしかと持ちながら、子供と大人の関係を嫌みなく描き出し、映画の持つ画面の美しさと演技の妙も備えた昨日同様に意味深い作品だった。
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