7月23日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで神山征二郎監督の「二つのハーモニカ」を観る。
広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで神山征二郎監督の「二つのハーモニカ」を観る。
1976年(昭和51) 近代映画協会、仙台協映社 70分 カラー 35mm
監督:神山征二郎
原作:川口志保子
脚本:松田昭三
撮影:南文憲
音楽:針生正男
美術:永沼宗夫
照明:小山勲
編集:近藤光雄
出演:南波広弥、佐々木正幸、福田勝洋、地井武男、岩崎加根子、殿山泰司、大泉滉、絵沢萠子
原作が児童文学とあり、この映画は複雑ではない。だからといって単純明快というわけではなく、疎開してきた少年と地元の少年、肺病の兄と特攻隊のお兄さんなどの明確な対極があり、二つのハーモニカも含めて対比がこの映画の基本要素となっていて、70分という上映時間の中で無駄なく、優れた構成として各ショットは輝いている。
オープニングからカラー画面の持つ美しさが夏の緑と太陽に照らしだされると、いつまでも虫の音と鳥のさえずりが背景に流れていて、音から離れられない夏の盛りにあることを示している。二人の少年の演技はぎこちなさがまるで気にならず、特に地元の少年の分け隔てのない率直な性格はうまく表れていて、耳の悪い婆さんに向かって「ばばあ、日本は負けたってよ」みたいな言葉づかいで玉音放送を伝えるシーンは、実にいい。
昨日観た「ひめゆりの塔」よりも各ショットは紙芝居の美しさを持ち、ほとんど知らない神山征二郎監督の変遷があると感じられた。編集にも叙情性の高い連結があり、昨日よりも挿入される風景のショットはより高い効果を持っており、しらけるようなことはなかった。
そのなかで気になったのがオープニング直後に繰り返される自衛隊の飛行映像で、ここだけは偏執というか少し程度の多さを感じたが、映画のラストに近い朝靄の出撃シーンを観ていて、この監督は飛行機が好きなのだろうと疑問を持った。ここで、昨日の「ひめゆりの塔」の中での攻撃をしかける飛行機のカットの意味がわかるようだった。
子供向けか大人向けかを抜きにして、余分を省いた脚本と構成の中で、画面は常に美しさを保っている。昨日の走りながらキャベツでキャッチボールする少女達の輝かしさは、今日は水の中ではしゃぐ裸の少年少女となっていた。
たった2作品を観て、作風は異なるもそれらしい監督の個性が見えるようだから、映画も個人の映し出しだという当然のことに面白みを感じた。
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