7月3日(金) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでナタシャ・ジュウコフスカ=クルチュク監督の「コメダ・コメダ」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでナタシャ・ジュウコフスカ=クルチュク監督の「コメダ・コメダ」を観る。


2012年 ポーランド語 72分 カラー 日本語字幕 デジタル


雨、上映開始15分経過後の入場、金曜日、長くない上映時間、ドキュメンタリー作品、知らない人物、多くの証言から構成される内容、などなどの言い訳が組み合わさり、すとんと睡魔に陥ることもあり、ほとんど感想の浮かばない鑑賞となった。どんなに優れた作品であっても、感覚器官がそっぽ向いていては何も得られない。そんなわかりきって飽き飽きしていることを、ただ感じさせられることになった。


ポーランドを代表する偉大なジャズ音楽家ではなく、ビル・エヴァンスやマイルス・デイヴィスにスポットが当たっていたら、おそらくこれほど気の抜けた状態にはならなかっただろう。興味が作品に対しての集中力を持続させるので、知らない人物ばかりが知らない人物を証言していてもつかめず、アンジェイ・ワイダとロマン・ポランスキーの発言シーンでその口振りと表情にもっとも関心を寄せたのだから、手がかりとなる既知をあまりに頼りすぎていたのだろう。


ところがnoteというサイトのオラシオさんの記事を上映後に読んでいると、この映画に登場する人々がいかに大物で、どれほどの人物のドキュメンタリー作品であるかが知れる。映画作品ではその虚像さえ感じられずにいたのが、数分の文章を開いただけで、まるで立体の絵本を見るように感じられた。もちろん基礎知識となるこの作品鑑賞があってこその塗り絵になったとはいえ、ほぼ何も感じずに素通りしたような印象を持っていたので、いかに自分の感受性が乏しく、知識がなければ何も得られないのを思い知らされるようだった。


ポズナン、ウッチ、モダンジャズカルテット、知っているようで知らず、ソポトのジャズ音楽フェスティバルも、ただの祭という言葉でくくってその色合いが何も見えなかった。それがちょっとだけオラシオさんから知識をもらっただけで、どれほど興味深い内容がつまっているように見えるか。近頃は理知よりも感覚に重きを置くような事を口走っておきながら、知性も感性も欠いて、ただ他人の感想に追従するようなかたちとなった。


とはいえ、これを発端として、今後ポーランド映画を観れば誰が音楽を担当しているか第一に探り、当たれば無味乾燥に思えた今日の映画作品に色を投げて厚みを重ねるようにするだろう。とはいえ、それが何になるだろうか。知識欲の満足はたしかにあるが、どれだけ増やしたにしても、垣根を越えれば知らない世界が広がり、そんな垣は短冊よりも多く無数にあって、永遠に知識は広がってやるせない気持ちになる。たった一つ知らないだけでひどく落胆して、それを表面に出さずに隠して知った気になるだろうか。


などと難しく考えれば、ややこしいことになる。興味を持ったなら調べて、興味がなければ次へ行く。ただそれだけのことで、noteで理解を得る記事を見つけだした行為こそが、肝心なのだろうとひとりごつ。

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