5月28日(木) 広島市中区河原町にある本川沿いのベンチに座る。

広島市中区河原町にある本川沿いのベンチに座る。


思い出したら足を運びたくなるもので、退勤後に川面に枝垂れる栴檀のベンチにやってきた。とにかく香りの良い今だから、羽葉がすこし原始らしい形態をもつものの、かろやかな風情をもつ枝葉にこんもりと葉っぱ同様の細かい花をつけて芳しさを広げている。


数年前からよくこの栴檀を見に来るには理由があった。マーラーの曲を聴きながら川面に心をしずめることが何度あったか、とても思い出深い川岸だ。


数ヶ月前まではアステールプラザへ行く道となっていて、最近はこの道を通ることはほとんどなかったが、そろそろ足を運んでみようかと、どんなパンフレットが置かれているか気になった。


対岸はHBGホールの帰りも同様に、舞台やコンサートの生々しい感慨を抱えながら暗い道を走り、そのまま平和大通りを抜けて相生橋へと帰り路に向かう。映像文化ライブラリーほど頻繁ではないが、何十回と繰り返し通ってきた道だ。


このベンチからは枝が邪魔して見えないが、川向こうに二つの文化を開く建築物がある。重厚としたどっしりする角張った外観と、曲線がやや低く長く、そこに休憩の景色を内から観る窓が細く張られている。


どちらの建物も動き出しているだろうか。広響とアステールの舞台を主に、自分に新たな面とつながりを築いてくれた文化活動が戻ってくることを願ってしまう。


こちらとむこう、両岸共に個人の思い出深いここの川は、どこよりも自分にとって広島らしい感傷の記憶が流れている。

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