5月5日(火) 広島市中区鉄砲町にあるワインバー「ポルコ」のテイクアウトを食べる。
広島市中区鉄砲町にあるワインバー「ポルコ」のテイクアウトを食べる。
非常に複雑な気持ちではなく、単純な感情の上下があった。腹が空いて食べ物を待っていらいらすることは自然だが、満腹状態でご馳走がやってきたことに不自然なほど怒りが湧いた。憤怒といってよいだろう。
原因は……、しかたない。食い違いでもあり、連絡の無意味もあり、高揚感における思いやりなのだから、怒っておきながら、ひどく申し訳なく、反省している。結局、自分に余裕のなかったのがすべてなのだ。
しかし何よりの原因は、このテイクアウトの品々がどれも美味しいということだ。ただ美味しいだけなら、無理せずに明日食べればいいや、となるが、レモングラスの入った爽やかな餃子を食べて、これは初めてだ、皮の厚みがよく、中の餡の配分も重たくなく、テイストは異なるがネパールモモを思い出させるナンプラーと辛酢のタレが絶妙に美味しい。ホタルイカとファルファーレも、臭みなく歯ごたえがすっきりしていて、パスタはできたてに勝るものはないにしても、味付けが素晴らしい。タコとアボカドも、柚子胡椒の効く中ですっと歯がささる厚切りのタコの食感が気持ちよく、分厚いアボカドも濃い味をそのままぶつけてくる。ジョルジュさんのパンとテリーヌの相性は言うまでもなく、人参のカナッペに混ざるグリーンクミンシードのフルーティな刺激に、ディルらしきディップの上にあるピンクペーパーの風味の高さといったら……、ついつい怒りがこみあげてしまった。
こんなに食べられない。それにもう舌が鈍っていて、味わいきれない。準備不足だろう、もはや取り返しのつかない、満たされない欲望に対して駄々をこねてしまった。とにかく悔しさが激情に届くほどとなったのは、料理が特別に美味しく、勿体なくてしかたなかったのだ。
満腹の時は何を食べても一緒のようなものだ。それはスマホを見ながら食べれば、何も味わっていないのと似たようなもので、質に対してはそれに合わせた準備が必要となるのだ。食べたいのではなく、味わいたい料理なのだ。
ついかっとなってしまっても、これを買ってきた背景が飲み込めるから、落ち着けばしんみりとした気分になってしまう。後ろでは酔っ払ってぐっすり眠っている。緊張、疲れ、開放、それらがおいしいワインと料理でのぼせてしまい、ついたくさん食べてもらいたかっただけなのに。
本当に申し訳ない食事となってしまった。
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