4月26日(日) 広島市中区中島町にある公園「平和記念公園」のベンチに座る。

広島市中区中島町にある公園「平和記念公園」のベンチに座る。


シーズンが始まったと今日の暖かさで感じる。季節とは異なり、外国のドラマのように一区切りが開始したような実感だ。


広島の観光の中心である平和記念公園は、住まいを選ぶ際の碇でもあった。今は観光客を家で迎えることもなくなったが、彼らの為の住まいと場所の選択であったこの場所は、葛飾で役割を果たしていた江戸川同様に、自分になくてはならない場所だ。山のような野生の自然ではない多様な動植物の混在する希有な場所だ。見る物は多くあり、草木はもちろんのこと、鳩と雀を始めとした小鳥達も同様で、訪れる世界各国の人々の顔形や衣服、それに言語や関係性なども多く見ることができる。もちろん、道路を通る人々から広島の今を垣間見ることもできる。今通った人ならば、黒いカーディガンの女性は薄手の白いプリーツスカートを履いており、白いマスクが表情を隠しながら、両手にぶら提げるテイクアウトらしきビニール袋を上下に持ち替えたりしている。


餌もないのに鳩は勝手に集まり、その中で特定のベンチに座って作業をするのが休日の恒例となる。もうすこし季節が進めば、夜の外灯の下でも可能となり、ふと蟹が目の前を忍び足で歩いていたりと、蛙の鳴き声だけでない空気の蒸れの中で酔うことができる。


それに建築も良いから、ここは広島の生活の中で最も愛すべき場所だ。悲しい場所であっても、自分には喜びの広がる場所だ。


暖かくなってきたから、少し厚着してベンチに座り、長々と過ごす。これが毎年いつまで続くだろうか。そんなことをすこし考えてしまう、光と風だ。

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