4月20日(月) 広島市中区中町にある居酒屋「菜づけ百屋 中町本店」のテイクアウトを食べる。
広島市中区中町にある居酒屋「菜づけ百屋 中町本店」のテイクアウトを食べる。
この店について聞いたことはなく、緑の箱型のリュックを背負った妻の配達によって初めて知ることになった。まるで使命を持って奔走する、一種の箱船の伝達だ。
今日も自分だけが持ち定めている夕飯時間に遅れて彼女は帰宅したので、最近、月と火に体調を崩す癖を持ち始めている自分は、相変わらずの疑念によって気が滅入り、まるでミイラのように布団で仰向けになって静かに配達を待っていた。元気が出ず、本を朗読するにも声を出す力がなく、ただただシューマンの本を読んでいた。
まるで目覚めたままの失神状態のようで、とてもおいしそうなおかずを前に気分は眉唾のようだった。まずディップに口をつけて、ツナの風味がふわぁぁっと広がった。ただ味覚もどこか忘れているようで、美味しいのだが自分自身が頼りなかった。胃腸に血が集中していたのか、食べているのに気が遠くなったままだった。
どこか素直な味に思えたのは、野菜ディップの印象だろうか。炙られたキノコに、自然に湯がかれたような野菜連が頼りがいのあるディップに身を任せるようだ。「ディップがあるから、俺たちはこのまま自然にあればいいんだ」、なんて台詞の浮かぶほどだ。
タケノコは油揚げの甘みが染みていて、久しぶりに食べたその揚げがやたらおいしく感じた。塩が旨味を引き出したような発酵キャベツは奥行きと広がりが適度にあり、玄人好みではないが、かといって軽い味でもなく、何度も箸をのばしてしまう飽きない味となっていた。油で柔らかくなった茄子は見た目通りオイリーに染み込んでいて、肉味噌の風味は数段上の存在感があって、混ざりかたが香ばしかった。
とはいえ、味わいきれていない気もした。普段の意識が80とするなら、40もあるのだろうか。食べてすぐに元気がでるのではなく、消化に時間がかかっているようだ。
万全な時に食べたいなどと思ってしまうが、人生の大半はそうでなく、不調のなかでいかに過ごすかが肝心だと、誰かが言っていた。
早く眠ろうとシャワーを浴びると、驚くほど元気になっている。今頃栄養が体に力をつけたのだ。それでも今日は早く眠る。不安な時は、寝るに限る。
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