3月26日(木) 広島市西区三篠町にあるパンとおやつの教室「ハチラボ」の食パンを食べる。

広島市西区三篠町にあるパンとおやつの教室「ハチラボ」の食パンを食べる。


継続することの難しさをそれほど知っているわけではないが、店を持ってからも変わらずに「ハチラボ」さんのパン教室に通い続ける妻の姿勢には感心している。広島に来てそれほど経っていない頃に、パセーラの上階での起業に関する催しに参加して繋がったわけだが、まだ店を持つことにおぼろげであって、はたしてどうなっていくのかと糸口さえ見えない頃だった。


どんな出会いから発展していくのかわからないのが人との関係で、大きく生み出されていく物事への順序は、ほとんど変わらないだろう。店を持ったからと驕り、パン教室をやめてしまうのではなく、どんなことがあるのか自分にはわからないが、疑いなく何か大切なものがあるのだろう。


パン教室に行くたびに色々なパンを持ち帰ってくるので、「ハチラボ」さんの特徴ある土台を持った様々な味を楽しむことができる。今回は食パンだが菓子パンもあり、レシピは毎度異なっているが、同じ人によって作り上げられたパンだとわかる。常に思うことは、フランチャイズや大きなパン屋とは異なる、極めて緻密で柔らかい生地の食感の優しさだ。高級食パンに近いふっくらした甘さがあるのものの、口に含んだ時の落ち着きがあり、噛みしめるごとに品のよいバターが薫ってくる。この繊細な生地はどんな種類のパンにも共通していて、ナッツやドライフルーツを使用した際の素材の品質の良さも変わらないのだ。


人柄はパンに出るもので、数度お会いしたことのある闊達なエネルギーの中に程度の高い妥協のなさがあるのだろう。ほんわかしていながら、優れて研ぎ澄まされた感覚と物怖じしない大きさがある「コナサン」のように、外面の性格だけではその作り手の個性は知り得ないものなのだろう。


パンを作る人を妻にすると、夫はやはり手作りパンを食べる機会が多くなる。それを幸運とすることもできるが、夫婦それぞれ力の集中する点が異なり、まわってきても、他がまわってこない例もあるだろう。


「ハチラボ」さんの旦那さんはどうなのだろうかと、カイザーゼンメルを時々タイガーゼンメルと言い間違いそうになる風味の強いパンとの違いを明確に覚えつつ、ついつい想像してしまう。きっと、おいしいパンを向かいに食べているのだろう。

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