3月13日(金) 広島市西区西観音町にあるフランス菓子店「パティスリー・マロニエ」のウィークエンド・シトロンを食べる。

広島市西区西観音町にあるフランス菓子店「パティスリー・マロニエ」のウィークエンド・シトロンを食べる。


前回店を訪れた時に目を惹いたのがウィークエンド・シトロンで、アイシングされた見た目が口の中で良い固さの食感を生むことが想像された。


家に帰る途中に思ったのは、フランス菓子店なのにどうして英語の名前なんだろうか。ところが家に帰って調べる時に思い出したのは、フランス語でも週末は、定冠詞付きのウィークエンドだってことだ。発音が異なるにしても。


彩色豊かなケーキと異なり、家庭で作られるパウンドケーキらしい見た目をしている通り、装飾の抑えられた生一本な味がする。レモンの薫り高く甘い酸味が上層にあり、気泡の細かい緻密な生地はしっとりしていて、ぱさつきなどない、柔らかくも軟弱でない食感がある。外側のアイシングも適度な硬さに砂糖とレモンが含まれている。いくつもの味の声はなくとも、口の中で細かいニュアンスで揺れるような味わいがあり、大袈裟ではない繊細な動きが全体の風味から感じられる。


今日は1日前倒しのイベント日であるが、クリスマスと違って今も関心がある。前に食事会のような場でバレンタインとホワイトについて会話があり、ふと年賀状を比喩にしたが、なんら珍しくない例えだろう。年々減っている慣習として。


義理とか何とかは実際どうでもよく、もらえば嬉しいものだ。プレゼントはそもそもあげる人ともらう人の喜びが均等に分かちあえるものだから、どこかに出かけた土産は別として、毎年やってくるきっかけを楽しむべくついつい配りたくなる。要するに格好つけたいだけなのだが、それで互いに嬉しくなる瞬間が数分でもあり、のちのちに思い出せるならば、静観よりもいいだろう、などと思ってしまう。


SNSに食事風景をあげれば、意識がどうちゃらこうちゃら、リア充、なんて言葉をネット上で目にするが、実際の生活範囲ではほとんど聞くことがなく、自分も使ったことなどない。きっと、義理とかそういう形容をするのも、似たようなことだろう。年末同様に毎年考える日だが、ろくに世間話もしない人達にちょっとだけプライベートな自分を披露するようで、決して嫌いではない。あげたいからあげる。人からどう思われるなんて気にする前に、自分がどうしたいか、それが重要だと誰もが知っているのに、それができないから僻み根性のような言葉で形容するのだろうか。


勇気に沿った行動は時に大恥をかくが、それが結果に表れた時はとてもうれしく、自分自身の変化が誇らしげになるだろう。小さい頃から意識する明日の前の日は、そんな行為について気づかされる、ささやかな贈り物の日だ。

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