2020年1月1日(水) 福山へ帰省する。

福山へ帰省する。


帰省という名を借りた宗教寺院と食を味わう旅行は予定通り進み、インフルエンザも落ち着いた町田の実家で食べたかった蕎麦をいただき、人生のほろ苦さを笑いに変えて新たに生きる気概を見習って自分も今年はすべきことに励もうと思えた。


毎年の東京への帰省に比べると、妻の実家がある福山への帰省は本当にのんびりした気分になる。それは居候のように食べてばかりいる呑気なもので、年々緊張も緩んで自然体になったと同時に、図々しくなっているのだろう。これが歳を重ねる厚かましさかわからないが、慎みは忘れずにいないといけない、昨年はずいぶんと酔っ払ってしまったから。などと思いながら、今年も遠慮なく食べてしまうだろう。胃腸の強い大食いではなく、虚弱とまではいかないが馬鹿はつく食い意地だから、汚くならないように気をつけないと。


広島と東京、どちらに帰るにしても、それぞれ違った健やかな家族の集いの中で自己を振り返り、生涯の一瞬を峻厳に見据える瞬間がある。JRの電車内で終活の広告を繰り返し見て、整理するほどの物なんて身の回りにないと首を傾げながら、一日一日を散らかさずに生きようと思いつつ、まあ雑になるから、度々片付けながら過ごしていこう、そんな程度だが、年をまたげる残り回数は着々と減っている。


ずっと年末年始が良いなぁ、と思いつつ、昨日の昼に持ち帰ったナンとパンを包みから出して、広島空港よりも飲み物が充実する洒落た羽田のラウンジでコーヒーと食べて浸る。カーテンを通した日差しが暖かく、昨年と同様の温もりと日焼けが思い出される。


年が明けたばかりなのに、過ぎていくことばかりつい考えてしまう。楽天的とはいわれるが、実際は悲観的なのだろうかと思うも、今と終わりに思いを馳せることはどちらでもないのだろう。なんて考える心気臭い新年の自分に、変わらない苦笑いが浮かんでしまう。

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