10月11日(金) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで成瀬巳喜男監督の「舞姫」を観る。
広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで成瀬巳喜男監督の「舞姫」を観る。
1951年(昭和26年) 東宝 85分 白黒 35mm
監督:成瀬巳喜男
原作:川端康成
脚色:新藤兼人
撮影:中井朝一
音楽:斎藤一郎
美術:中古智
出演:山村聡、高峰三枝子、片山明彦、岡田茉莉子、二本柳寛、見明凡太朗、木村功
大概の映画作品は自分の好悪が大きな意見をして邪魔をすることはないが、時たま生理的な反応によって作品を観ることがあり、このバレエを要素として組み入れた物語が好ましく見えなかった。
西洋の文化であるバレエと一緒に上流階級らしい勿体ぶった振る舞いまで倣っているようで、芝居らしい芝居はわざとらしさを越えて様式らしいお遊戯となり、厳格な躾によって誰もがお品という面を被って固定されたような味気なさがあった。それはあくまで好みの範囲となり、テレビのお笑い番組を見れば大いに笑うが好き好んで見ない自分であっても、世俗っ気を持たないすました人情劇に鼻持ちならない気分になり、夫婦の問題がまるで深刻に伝わってくることはなかった。雲の上に住む人々が軽い切り傷に大騒ぎして泣き出すような光景を見るようで、音を立てて飛び回る羽虫が事務所に一匹入ってくるだけで派手に喚いて逃げるような人達や、たった一箇所だけ蚊に刺されたくらいで女性に訴えて塗り薬をもらうような男を見るように、目が細く白けてしまう感じだった。直截に言えばユーモアが足りず、それをカバーするだけの細心な描き方も、力強さも足りなかった。
その代わりバレエのシーンは見ごたえがあり、この時代にこれだけの文化が日本に根づいていたのだと、古く貴重な資料を見る喜びがあった。谷桃子バレエ団による振付と踊りで、パガニーニの曲に乗って踊る二人の男女の姿に、マイヤ・プリセツカヤのドキュメンタリー映像をモノクロで観て感動した時と似た情感が蘇った。古い映像でも動きの柔らかさとメリハリは感じとれて、バレエ関係者でもない自分でも昔の日本人も凄かったのだと確固な礎を見るようだった。
作品の特色は苦手であったが、出演していた岡田茉莉子さんの若々しい下膨れの顔が器量良く、二重の上品な目に、優しい情愛の持った声はとても好ましかった。
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