10月4日(金) 広島市西区横川町にある焼き鳥屋「豚鳥 横川店」で串を食べる。

広島市西区横川町にある焼き鳥屋「豚鳥 横川店」で串を食べる。


広島に来てからというもの、妻は性格と商売により知り合いが増えていき、訪れてみたい店が何軒もあるというので、知り合い作りが根っから不得意な自分は一人で夜の飲み屋に行くこともほとんどないので、互いの利害が一致して相伴することになり、少しずつ色々な店に行ってみようということになった。


ちょうど広響のディスカバリーシリーズは一緒だったので、帰りに「豚鳥」さんへ寄った。とにかくお腹が空いていて、閉店時間ぎりぎりだと勘違いしていたのもあり、一気に食べ物を注文しようと事前に話し合っていたとおり、妻は5本、自分は10本の串をおまかせでお願いしようとしたら、とりあえず1本ずつ出していきますので、十分になったら言ってください、と機転を利かせてもらった。


水分も食物も足りない状態で、次々とボリュームのある串を食べていく。焼きたてはどれも異なった美味しさがある。自分にはやや塩っ気と味わいが強いと思われたのが数本あったのは、あまりに空腹だったせいだろうか、酒と肉が一気に体に入り、血の多くが消化へ向かい、一気に酔っ払って頭が朦朧となってしまった。


見た目からして質量は詰まっているが、口にするとより大きな料理だと実感する。学生の時に焼き鳥屋で働いていたから名前と串は大体一致するが、物量が異なるので初めての体験として混乱していった。


さすがに7本目ぐらいで腹がきつくなり、そろそろ十分ですと伝えると、10種出しますねという途中の言葉が耳に入っていなかったので、一瞬間が空いてしまう。あきれた妻から説明をもらい、また間抜けをやってしまったので、続けてくださいと伝えて、苦笑いするしかなかった。


もはや自分たちは、「おいしい」でしか会話できない呆けた二人組となり、これといった発展する会話はなく、運ばれてくる串を食べてばかりいる。「東京物語」に登場する老年夫婦のような関係だとこじつけて、あんな雰囲気などとてもないが、まあこれでいいのだと無言でぼんやりする。


それでも「豚鳥」の店主さんとの会話になると、妻は元気に話しをして、自分もそれを神妙に聞いている。近頃になって、無言状態の食事時間を避けて無理に話しをするよりも、ただ食事するのもいいのだろうという気がしてきた。以前は、主語と述語のない、順序を持たない、飛躍する話し方に対して突っ込みを入れたくなっていたが、もうそんな細かいことは気にせず、その特有のレトリックから意味を味わうほうが大切だとわかった気がした。そのせいか、時間にルーズになり、昔に比べて慌てて出かける頻度がえらい増えたが。


おかげで、10本出てきた串の7本しか写真におさめることはできず、そのカメラをカウンター下の棚に置き忘れて帰った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る