音楽、映画、美術、舞台、食事、文学、観光についての体験感想文集
8月23日(金) 広島市南区比治山本町にある南区民文化センターのスタジオで「山田系演劇ユニット やまだ祭 第2回公演『ヤマダス』」を観る。
8月23日(金) 広島市南区比治山本町にある南区民文化センターのスタジオで「山田系演劇ユニット やまだ祭 第2回公演『ヤマダス』」を観る。
広島市南区比治山本町にある南区民文化センターのスタジオで「山田系演劇ユニット やまだ祭 第2回公演『ヤマダス』」を観る。
作・演出:山田めい
舞台美術:山田眞子
音響:山田雅宏
照明:山田晃年
ヘアメイク:山田真教、山田梨乃
制作:山田明奈
宣伝美術:山田友和
会場アナウンス:山田一穂
出演:山田眞子、山田明奈、山田めい、山田健太
お土産もみじ饅頭:やまだ屋
舞台監督:池田典弘
制作:三井奈々
映像制作・記録:三井宏文
出演:木村圭理、小田貴音
山田しかないパンフレットを見て、どんな物語か、そもそも物語か考えもせずに足を運んだ。結果舞台は、予期した通り山田しかなかった……、わけではないが、山田に侵食された。
白い舞台装置が、冒頭の山田の診察から始まり、白昼夢か、それとも悪夢か、観る者の気分で決定してよさそうな物語を色で表していた。移動船「ダーヤマ」に乗って、ヤマダス文明の聖地「ヤマダス」へ向かう行程は、観るものを山田に塗るのではなく、無垢な山田に漂白させるようで、相撲の番付けを想起させる山田の羅列された小道具のハンカチは、白の舞台上で記憶にぴたりと張り付いて、湯呑のように巻き付き、山田へと虜にするような印象の強さがあった。
1時間に満たない小気味よい舞台の中で、役者さんはそれぞれの山田だった。前田も、もはや山田で、「不思議惑星キン・ザ・ザ」の重要な言葉である「キュー」と「クー」と似たように、「山田」という言葉が多くの意味を持ってこの物語を語っている。一があれば、多をそれほど必要としなくても成り立つという考え方は間違いではないと証明するように、多くの山田が、山田という言葉で話を進めて、山田という概念により、山田な結末を迎える。
この劇は山田の主題による変奏曲のようだ。また、子音や母音の順序が逆転したりするので、とある言語の語根のように山田は存在していて、様々な形に活用される。まるで「運命動機」のように山田は唐突に表れて、増え、形を変え、構造物を成していく。
しかし、個人的に最も印象に残ったのが、船内が山田の文字に侵されてしまい、それを外して一人一人を取り戻していくシーンで、スメタナの「わが祖国」のモルダウが流れていて、演技と音楽がにくい一致を示していた。それは有名な「2001年宇宙の旅」で「美しく青きドナウ」が合わされるのと似た感じがあり、ヤマダスというわが祖国に帰る移動船ダーヤマが、宇宙船になり、山田という文字の実体を外して体を取り戻すのが、宇宙へ、山田への回帰に思われるほど、肩の力が抜けるリラックスした効果を出していた。ラーマーヤナに、サイケデリック、頭にガネーシャとホトケが浮かぶほど原生的な猿に戻る気分だった。
山田に終わり、山田に終わる。まるで「フーガの技法」のように、山田は曼荼羅のように転じ続ける。宇宙の輪のように。非常に壮大な物語だった。
水島である自分は、酒井から水島に名字が変わるので、会社の集まりでその事を述べる際に「ドカベン」の水島新司さんを引用したが、誰一人反応しなかった記憶がある。「ビルマの竪琴」から水島上等兵を借りればよかった。ところが問題はこの頭の考え方で、水嶋ヒロさんを語れば、おそらく反応はあっただろう、特に事務の女性からは。ただそれは、漢字が異なるので違う。山田ならば、山田太郎が使えたのに。
山田錦の酒も土産に欲しい。そんなことを考えながら家に帰り、多くの山田について話して、もみじ饅頭を食べた。その夜は、独り言で“ヤマダス”と気づかずにつぶやくのが何度かあった。山田は計り知れない。
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