8月12日(月) 豊田市で開催されている「あいちトリエンナーレ2019 情の時代 豊田市エリア」を観る。

豊田市で開催されている「あいちトリエンナーレ2019 情の時代 豊田市エリア」を観る。


ニュースで知ったこの芸術祭の豊田市エリアがあったので、ついでに観て回った。


まず豊田市美術館内の作品を観た。まずは階段の踊り場上部壁面に描かれたアンナ・フラチョヴァーさんの「ミッションからの帰還」を観る。アクリル樹脂らしく、古代のレリーフらしい質感があるも、描かれている姿は丸みを帯びて愛らしい。それでも偉大な歴史の出来事をモニュメントとしての形で残されているようだ。この芸術家の別の「アセンション・マークⅠ」はティファニーのようなブルーと白を基調に、細くなめらかな棒が柔らかい曲線と直線で地上から立ち、そこにやはり丸みのある手や一部分を切り取られた彫像の上半身が棒の上に浮く。かわいらしいくあるも、それだけではないニヒルな何かをつい考えてしまう。


見応えのある作品が多く、タリン・サイモンさんは権力や組織が持つ合理性が写真で切り取られていて、その冷徹なまでの暴力性や残酷性が、見事な構図と、ぞっとする解説で組み合わされている。思考力が非常に問われる作品で、一見すると何もわからない花の写真群は、その背景にある国家間の出来事を知ることによって様変わりする。


レニエール・レイバ・ノボさんは、キューバの革命にまつわることや、その国の体制などを知ればより作品の意図と表現を理解できるだろうが、天井から突き出た巨大な手を前にするだけで、何かしら体感できるだろう。


この豊田市美術館で単なる動きに見とれることができるのは、スタジオ・ドリフトの作品で、天井からいくつも吊り下がる照明が、ランダムに上下して明滅するだけだが、西洋の古いドレスのように重なった花のようなシェードには柔らかい質感があり、少し動くだけでひだは優美に揺れて、甘美な感覚を生む。噴水のショーを見るように人々はこれを様々な視点から眺めていて、その公園にいるような静けさと空間の広さは、まるで灯が踊っているようだった。


あとは、豊田市駅周辺の無料作品を観たが、暑さと疲れで、いくつかは足を運ばなかった。小田原のどかさんは戦争にまつわる研究的な作品で、直接には関係ないらしいが、間接として最近のニュースについてのコメントが貼られていた。トモトシさんとアンナ・ヴィットさんの映像作品は、コンセプトとそのカメラの映す実体は、どうも自分にはテレビ番組のように見えてしまい、はたして芸術としての価値があるのかと疑ってしまう。あまりにコンセプトが前に来ているので、発想の面白さはあるものの、そこに美はあるのかと疑問に思う。


アンナ・フラチョヴァーさんの作品だけが、自分にとっての芸術の規範にたやすくおさまった。あまり頭は使わずに、感覚だけで味わいたいものだ。

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