3月30日(土) 広島市中区幟町にあるエリザベト音楽大学セシリアホールで「Kammerchor "Hiroshima Kantorei" 第5回定期演奏会」を聴く。

広島市中区幟町にあるエリザベト音楽大学セシリアホールで「Kammerchor "Hiroshima Kantorei" 第5回定期演奏会」を聴く。


指揮:寺沢希

合唱:カンマーコールヒロシマカントライ

管弦楽:ヒロシマカントライカンマーオーケストラ

テノール:田尻健

パイプオルガン:佐々木悠


ラフマニノフ:「寝ずに祈れる神の御母」

バッハ:おお、神の子羊、罪なくして BMV656

メンデルスゾーン:「ドイツ典礼」より、夕べの礼拝に、キリエ、天のいと高き所には神に栄光

バッハ:おお、神の子羊、罪なくして BMV618

メンデルスゾーン:「6つの箴言」より、受難の時に、聖金曜日に

バッハ:コラール「甘き死よ、来たれ」BMV478

ニーステッド:不滅のバッハ

ロッティ:十字架に付けられ

グレゴリオ聖歌:悲しみの聖母

カルダーラ:十字架に付けられ

バッハ:おお、神の子羊、罪なくしてBMV1095

バッハ:モテット「来ませ、イエスよ、来ませ」BMV229


前に、エリザベト音楽大学が創設された経緯と、声楽が特に有名だという話を聞いていたので、今日のコンサートが楽しみだった。


合唱とパイプオルガンが交互に演奏されて、民音主催の民族音楽の舞台で、歌と踊りが交互に上演されるのを思い出した。


広島カントライの結成されたのが、2014年1月らしく、まだ新しいのだと驚いた。声楽を聴いた経験が少ないから判断はおぼつかないが、自分にとっては質の高い演奏をみせていて、最初のラフマニノフから、声楽のみから得られる特別な実感に包まれた。日本人の発音する英語が聞き取りやすいように、今日のドイツ語の歌唱は単語が明瞭に聞き取れて、歌詞の意味も音楽の表現と共に、自分の感覚に乖離が少なくついてきた。


バッハのコラール「甘き死よ、来たれ」が特に威厳に満ちていて、まずテノールの田尻さんのソロで教会の香と冷たさが身に迫るように歌われ、続いて二階も使って5つに別れた声楽隊が、コム、コム、とドイツ語で、英語でいうカムにより、死を招来する。ピアノか、ピアニッシモか区別はつかないが、静かに、長く、引き伸ばされて歌われる声に包まれて、パレルモのとある教会のカタコンベの中にいた記憶が蘇らされた。肉が土として骸骨にこびりつくいくつもの風物のなかで、静謐に、空気は響いている。それは単純明快な死の表象で、無から来て無へと向かう、空間と時間の存在しない、水の分子記号のただ1つもいない、無、それに人間の感覚が質量を与えて表現した悠久の時として、眠りがいつまでも続くように、声はどこまでも続いていく、誰もいないカタコンペと同じように。


ストップによって音色の変化するパイプオルガンや、室内楽を含めた彩りの多いモテットなど、噂どおりをそのまま当てはめてしまうほど満足のいく演奏会だった。


そしてそんな噂は嫁さんのお客さんから伝わったのだが、家に帰って演奏会の話をすると、どうやら同じ会場に嫁さんはいたらしい。

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