3月3日(日) 広島市中区袋町にある旧日本銀行広島支店と平和大通りで「平和大通り芸術展 Hiroshima ARTery 2019」の作品を観る。

広島市中区袋町にある旧日本銀行広島支店と平和大通りで「平和大通り芸術展 Hiroshima ARTery 2019」の作品を観る。


増田洋美

藤江龍太郎

カン・デヨン

伊東敏光

MAYA MAXX


去年は確か巨人の足が平和大通りに展示されていた。今年は何だろうか。ラジオでも、インスタでもその開催を知っていたので、今日は足を運んだ。


増田さんの作品は、ヴェネチアの風がリズムよく吹き、ギリシャ神話の気まぐれな風の神様をガラスの先端に観るようで、優美に、水と風は青く、それぞれに吹かれている。太田川の波紋をつい観てしまう。ドビュッシーの曲が頭によぎる。


カラフルなガラスは、くすんだものはゴムボールが、透明なものはプラスックがへこんだように散らばり、なめらかそうな肌ざわりと窪みは、耳のようにも見える。川原や海辺に転がる水流に洗われたガラスや鉱石のように、それを見つけて小さな宝石と思い、そこらじゅうに探して拾い、喜ばしさを広げる子供心が置かれている。


藤江さんの作品は、部屋に積み木やレールなどのおもちゃが置かれ、二台のテレビには、一つは広島の平和記念公園で、もう一つは海外の土地で、車輪のついた木の鳩を紐でひいて転がし続ける藤江さんらしき映像が流れる。鳩は雑穀の糞を白線を引くように垂れ流し、なくなれば、藤江さんが背から補充する。その繰り返しで、一体何を意味するのかと観ていると、海外のとある場所で、鳥瞰された映像には、木の鳩の通ったあとに雑穀を求める鳥が多く群がり、蟻の行列のような有様が映し出されている。


平和大通りの巨大な木の鳩からは、雨に濡れて、木材の良い香りが漂っていた。


カンさんの作品は、遠くからみると見えず、近づいてなんとか認識できるそれは、なかなか見つけられないまさに蚊そのものだ。銅線で造形された形象には、昆虫特有の一切の無駄を省かれた機械と同様の機能美が剥き出されていて、尻のあたりなどはヘリコプターのようにも見えて、足がプロペラにみえてしまうほどだ。


伊東さんの作品は、遠くからでも異形なものがわかり、気味の悪い不快な造物があるだろうと予感させる。間近で観ると、奇怪で、嫌悪させるような不安を突きつけてくる。しかし、よく観てみると、肉の削ぎ落とされて突っ張ったような肌の脚は鹿のような草食動物の落ち着いた歩みがあり、アンモナイトのような節のある胴は腸が巻かれたような形をみせていて、その柔らかさをもったそれは、色の示すとおり内臓の中身である糞のように見える。やけに突き出た尻が、なぜかかわいらしく見えてしまうのは、どんな生き物でも、常に尻は愛嬌があるのだ。糞のような生き物でさえも。


MAYAさんの作品は、サリエリパンツを皮膚に履いたような短足の女性が描かれていて、細長い顎に尖った耳などの風貌から獣性が感じられ、その隣に描かれている動物達は簡素で無表情でありながら、人間性が表れているようで、それぞれの性質が絵の中で仲良く取引きされているようだ。屋内の壁にかかる作品は、水彩画で描かれているようで、アクション・ペインティングのようなありありとした線の動きとは別に、水墨のように滲む青から、どきっとするほどの生彩な猿や鹿が、神秘と共にこちらを見る。


あとはホテル内に作品が展示されていて、それはまた別の日に観に行こう。

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