2月23日(土) 広島市西区草津南にある109シネマズ広島でMETライブビューイング「アドリアーナ・ルクヴルール」を観る。
広島市西区草津南にある109シネマズ広島でMETライブビューイング「アドリアーナ・ルクヴルール」を観る。
チレア:アドリアーナ・ルクヴルール
指揮:ジャナンドレア・ノセダ
演出:デイヴィッド・マクヴィカー
出演:アンナ・ネトレプコ、ピョートル・ベチャワ、アニータ・ラチヴェリシュヴィリ、アンブロージョ・マエストリ
物語は18世紀前半のパリで、実在した大女優アドリアーナ・ルクヴルールが主人公となる。ヴェリズモ・オペラという19世紀末にイタリアに誕生した様式で、大仰ともいえる感情表現が特徴らしい。
色男をめぐる女同士の恋の争いが主題となり、観ていて痛快に思える時もあるが、怖気に震え、結局は毒殺で幕を閉じるという痛ましいストーリーだ。親しみやすいメロディーがあり、演技も歌も大胆な感情表現により飽きがなく、見どころも多いが、役者が巨大なので唖然とするほどの量感があった。
第一幕からロシアのアンナ・ネトレプコの歌に開いた口が塞がらなくなる。今日で今期は第6作目となり、第1作目の「アイーダ」でも彼女を観たのだが、これほどの人物なのかと思い知らされた。METのライブビューイングは毎回極点に行き着いたような舞台だと感嘆するが、アンナ・ネトレプコの存在は一回り大きく、演技、歌唱、その存在感は、スター女優を演じるのにふさわしい芸術家をありありと見せつける。
さらに「アイーダ」でも共演したグルジスタンのアニータ・ラチヴェリシュヴィリが、また違った役によってアンナ・ネトレプコと火花散るでは済まない火炎の渦巻く戦いの場面をみせる。この人も第2幕から恐ろしいまでの存在感を放ち、演技、歌唱と、すっかり魅せられてしまった。
そしてこの二人の怪物ともいえる女優の争いの種となるポーランドのピョートル・ペチャワが、伸びのあるテノールで軽薄なはずの男を、信実な人物に思わせるだけの歌いっぷりをみせる。二人の女優にかすむようなやわな男ではない。
舞台を模した舞台装置は落ち着きがあり、18世紀のパリの劇団の模様を生彩をもって形作り、登場人物の動きはコミカルであるも、衣装はこれまた豪勢で、夢のような舞台になっている。
第3幕の「パリスの審判」のバレエで演出される前後の場面の躍動感とリズムが特に魅せられ、「フェードル」の一場面を演ずるアンナ・ネトレプコの姿は、極限までに達した女の復讐が見事なんてものじゃなく表れて、これ以上のものがあるのかと思うほどの過激な人物だった。
ちなみにラシーヌ作の「フェードル」は自分の中の先入観に彩られていて、プルーストの「失われた時を求めて」でラ・ベルマという女優の演技にさんざん言及されている。
アンナ・ネトレプコがまだ観たことのない「フェードル」の最初の具象としてのとっかかりになったのだろうか。それにしては、あまりにも苛烈な場面になってしまった。
次は有名な「カルメン」だ。観終わったあとはへとへとになってしまうが、それでも得るものが大きいから毎回楽しみでしかたがない。
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