2月19日(火) 広島市中区十日市町にある「アリエッタ・ヴェルデ」でヴェルデランチAを食べる。

広島市中区十日市町にある「アリエッタ・ヴェルデ」でヴェルデランチAを食べる。


天気予報では雨だったので、自宅に帰らずに昼食は外でとろうと前日から決めていた。


半年以上前から訪れたいと思っている自宅から歩いて3分のイタリア料理屋へ行こうと思っていたが、雨脚が強く、これでは店に行く前に靴がだいぶ濡れてしまうと思い、なら近くの中華料理屋か、それとも目の前の居酒屋の唐揚げ定食か、迷いながら選んだのはこの店だ。


案内されたカウンター席からは、地中海沿岸地域のモザイクを想起させるタイルによる窯があり、中には木が燃え、視点を遠ざけると、機動戦士ガンダムのモビルスーツの顔に見えなくもない。


サラダは前回来た時同様に、レタスの上に食感のよい細切りのニンジンがのせられ、タマネギ、ニンニク、粒マスタードのドレッシングがかかる。素材の香りは強すぎず、酸味が刺激的に甘酸っぱく、柔らかい陽光のように朗らかになる。やっぱりニンジンがおいしい。


スパゲティは自家製サルシッチャとホウレン草の生クリームソースで、ソースの一口目は濃厚ながらサルシッチャの旨味を含んだクリーミーな味わいに、生きの良い黒胡椒がたしかに跳ねる。食材の説明に、グラナ・パダーノチーズが記載されているので、この鮮やかな沼の味わい深さに潜んでいるのだろう。サルシッチャは塩気と豚の味が強く、とても存在感がある。それに常にきざな印象を与えるほうれん草が加わり、しっかり芯が残り噛めば噛むほど味の出るスパゲティは餅つきのように口内で味を広げ、黒胡椒がいくつもきらびやかに装いをみせて喉へと通り抜けていく。


デザートはジェラート、ジャンドゥーヤ、ヘーゼルナッツとチョコがなめらかな舌触りで、仲の良さを親しげに味わえる。どちらも木の実だから、豆腐と醤油に例えたらおかしくなるが、似たもの同士の結びつきだろう。ぺろりといく。


雨脚は変わらずとも、気分はやけに晴れやかで、午後の倦怠が平常の毎日に誤差が出て、やけに鷹揚に働いて同僚に接するなんて、あまりにも単純じゃないか。おいしいものを食べれば、人はたやすく優しくなれる。

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