2月17日(日) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・オーケストラ等練習場で「へんみ弦楽四重奏団」を聴く。
広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・オーケストラ等練習場で「へんみ弦楽四重奏団」を聴く。
徳永崇:ヴァイオリンソロのための「Holon l」
リゲティ:弦楽四重奏曲第1番「夜の変容」
リゲティ:弦楽四重奏曲第2番
1stヴァイオリン:辺見康孝
2ndヴァイオリン:安田つぐみ
ヴィオラ:坪ノ内裕太
チェロ:大西泰徳
徳永崇さんのわかりやすい解説付きで始まる前に、辺見康孝さんがヴァイオリンソロを演奏した。躍動感のある冒頭から、バルトークの「ルーマニア民族舞曲」を想起した。様々な奏法に、変速的なリズムで、複雑な曲だが、ステップが頭に広がった。騎馬民族の脚さばきと、生活の場となる広い土地だ。
それから解説が入り、「弦楽四重奏曲第1番」はバルトークの影響が色濃く表れている作品で、半音階を基本とした変奏で組み立てられ、そこには西洋の古典的な形式と、当時代の前衛的な技法が組み合わされている。そのような意味合いの前置きを基に、曲を聴いた。
リゲティという名は、自分の中でキューブリックの映画と結びついており、音のイメージからどうしても映画のとあるシーンが張り付いてしまう。伸縮の強い、白い布のようなもので巻かれるようにだ。
それが「弦楽四重奏曲第1番」で、すこしは剥がされた気がした。たしかにバルトークは存在しており、トランシルヴァニア中南部のトゥルナヴェニ生まれのリゲティは、たしかに「トランシルヴァニアのルーマニア民俗舞曲」という名で初演された作品を生み出した作曲家の系譜にあることをはっきりと示していた。聴きやすく、完成度の高い作品で、辺見康孝さんが情熱を持って演奏を運んでいった。
それから「弦楽四重奏曲第2番」になると、解説に合ったとおり、トーン・クラスターや微分音といった聴き馴染みのない新しい技法が試みられているらしく、それらを聴き分けられるわけではないが、キューブリックの映画のイメージに近いリゲティが再び自分に張り付き、深層意識の様々な変遷を体感するような音の続きは、ちょっとした外部の刺激により心の奥底が自身で気づかないように波立つようで、マーク・ロスコやジャクソン・ポロックのような絵画に託せられる印象があり、とても面白かった。緊張感のある演奏が続き、冷静に熱を帯びていて、古典的な純度の高い音楽性に浸るわけではなく、情感溢れる演奏にのるわけでもなく、だからといってミニマルらしい機械的操作にもならず、神経をすり減らすようなスリリングな調子で演奏されていて、見事だと思った。
堅苦しくなく、とても好意的にお話しされて、楽譜もどうぞ見てください、と言って挨拶する辺見康孝さんと演奏者さん達の後味が良かった。こういう曲を聴ける貴重な機会を得られて、とても良い経験になり、再び広島で現代音楽を演奏しに来ていただきと思った。
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