2月6日(水) 広島市中区加古町にある広島文化学園HBGホールで「広島交響楽団第387回定期演奏会」を聴く。

広島市中区加古町にある広島文化学園HBGホールで「広島交響楽団第387回定期演奏会」を聴く。


オーケストラ:広島交響楽団

指揮:下野竜也

コンサートマスター:佐久間聡一

メゾ・ソプラノ:藤村実穂子


フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲

ワーグナー(モットル編曲):ヴェーゼンドンクの5つの詩

R・シュトラウス:メタモルフォーゼン(23独奏弦楽器のための習作)

フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」夕べの祈り~夢のパントマイム

アンコール

R・シュトラウス:明日


今日はハッピーな演奏会だった。睡眠不足のせいで、どの曲を聴いていても眠気が割り込み、聴いているようで頭はまったく支離滅裂な映像を作り上げていた。意識の連続に幾つもの休止が入るようで、はっと目覚めることが何度もあった。


そんななかでも、藤村実穂子さんのたたずまいと歌声が意識に入ってきた。凛とした、では表現できない、研ぎ澄まされた存在で立ち、歌声にどれだけの表現力が含まれていることだろう。能楽を観るように、余計なものは削ぎ落とされていて、必要なものだけがあった。限りなく純化された芸術だ。


リヒャルト・シュトラウスのメタモルフォーゼンに、この作曲家の才能の大きさにいまさら気がついた。他の交響詩も悪くないが、どちらかというと陰よりも、華やかさと明るさを感じるこの作曲家の色が好みではなく、良いのだが、偏重して聴くほどではなかった。ところが今日の曲は、マーラーの未完成の交響曲第10番のような弦楽器だけの祈りの調べを感じた。


心臓の鼓動が止まらないように、テーマが動きを止めずに色々と形を変えていく姿は、生命の根源のような脈動を感じた。オーケストラの動きと下野さんの指揮が一体となって生命体となり、もぞもぞと蠢いているようだった。それがとても生気があり、また純一された暗い感情に火が揺らめいているようでもあった。


フンパーディンクは親しみやすかった。今日のプログラムは愛がテーマとなり、それぞれの曲で様々な形の愛が表されていた。


アンコールで、藤村実穂子の高音に、思いがけない情感を得た。こんな体験はめったにない。詩は、歌は、音楽は本当に素晴らしい。


下野さんも、藤村さんも、コンマスの佐久間さんも、広響のみなさんも、なんだか見ていてハッピーだった。今日のテーマは愛。毎度良いコンサートだと思って帰るけれど、今日も、笑顔と拍手で会場を貫いた、友愛に満ちた時間だったと嬉しくなった。

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