12月1日(土) 広島市中区白島中町にある「ブランジェリ ヒロ」でパン・デピスを買った。

広島市中区白島中町にある「ブランジェリ ヒロ」でパン・デピスを買った。


我が家はパン職人がいるので、いつもおいしいパンを食べられる。これはとても幸せなことだ。しかし、仕事が忙しいと、パンが家にまわってこないこともある。そんな時は、しかたなく店でパンを買うが、ちょっともの足りない。おいしいことはおいしいが、上品にまとまり、強引ともいえる力強さが幾分足りない。全粒粉やライ麦などに慣れてしまうと、食パンじゃ足りない。がっちりした、主食としてのパンを欲しくなる。


久しぶりに白島にあるパン屋さんに行った。カンパーニュはもう焼いていないらしく、置いてあるのは全粒粉と米粉の混じった角パンと、バゲットだけだった。


バゲットを頼み、せっかくだからカヌレでも買おうとしたら、質の良いバニラビーンズが手に入らないらしく、作れずにいるとのこと。フィナンシェも売り切れていて、ふと目についたパン・デピスを買うことにした。


洗練された細工のケーキも好きだが、こういう家庭的なものも嫌いじゃない。にんじんケーキなどは生地に重点を置かれ、パティスリではなくブランジェリらしさがあり、我が家のパン職人はそういうのを何度も作り、それらの味に慣れてしまったので、このパン・デピスがなんだか懐かしく感じてしまった。


原料は、小麦粉、ライ麦粉、バター、砂糖、蜂蜜、寒天、ベーキングパウダー、香辛料とある。店の人は3種類の香辛料を使われていて、シナモンが香るというので、3種類はなんですかと訊ねると、親しみやすいおばちゃんはわからないんです、と答える。


シナモン、クローブ、アニスはわかる。甘い生地の答えは蜂蜜か。すこしばかりねっとりした味で、生地はがっちりとした密度ではないが、ぼろぼろこぼれるわけでもない。統一感のある味ではなく、そこへ向かう過程の込み入った香りの良い味で、香辛料が大声でおしゃべりし合っているようで、やや強く、後味にアニスが口に残る。親しみやすい味だが、キャラウェイなどを避けるような日本人にはいささかきつく感じるかもしれない。


フランスよりもドイツらしいパンやケーキを好む我が家の職人が好みそうな味だが、もし作ったとしたら、アニスは抑えられて、そのかわりシナモンが際立ち、ほんの少しだけ生地の密度はしまるかもしれない。焼き上がりの形は似ているだろう。上品ではなく、生活感が強調される。


アルザスではクリスマスマーケットに並ぶらしい。シュトーレンを最近よくみるけれど、流行りだすと興味を失う傾向のある我が家の職人は最近作らない、昔は作っていたのに。忙しいだけかもしれないけれど。

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