11月29日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで堀川弘通監督の「黒い画集 あるサラリーマンの証言」を観た。

広島市映像文化ライブラリーで堀川弘通監督の「黒い画集 あるサラリーマンの証言」を観た。


監督:堀川弘通

脚本:橋本忍

出演:小林桂樹、原知佐子、平田昭彦、中北千枝子


ついこの間の「68年5月革命特集」の影響で、カメラアングルという馴染みのない言葉を意識して、仰角やら、俯角やら、クローズアップやら、映像をただ観るだけでなく、何を表現してのカメラワークか考えながら映画を観た。


もちろんよくわからないことばかりだったが、こんな表現の味わいがあるのだということがほのかに感じられた。ただの器にしか見えない焼き物も、その産地で様々な物に触れることで、なにも見えずにつまらなく思っていた色合いや肌合いが、それなりの意味合いを持って目に映るようになる。


この映画は、冒頭の見下ろす視点が、エンディング間際の主人公を見下ろす視点と対比するようで、蟻のように忙しく働く人々の営みに対して、主人公は1人すべてを失った燃えかすのように先のない未来へ放り出される姿が映される。


斜めに見上げ、また見下ろすアングルが多く、極端にクローズアップして必死に真実を訴える姿を全面に映すこともあった。カメラが対象を追うことも多いと思った。そんなように映画を観るのも面白い。


原作は松本清張の「黒い画集」で、伏線と、物語の発展は無理がなく、とても上手だと思った。脚本の橋本忍の力量だろう。


文章表現にしても、映像表現にしても、音楽表現にしても、作品の善し悪しを評価する基準は無数にあり、文体が良くても構成が上手くなかったり、文体は平凡で品格がなくても、物語の構成が抜群に優れていたり、話はさっぱり面白くなくても、文法から逸脱している悪文らしきところに個性と唯一無二の芸術的な要素が溢れていたりと、それぞれの個性があっての作品だ。


狭く深くはならない、広く浅くいながら、少しでも底を掘っていけるようにと思うも、気が多いんだよなぁと、映画を観る。

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