11月11日(日) 広島市中区堀川町にある「津久根島」で梅コースを食べる。

中区堀川町にある「津久根島」で梅コースを食べる。


白米はふっくらと炊きあがり、汁は赤だしだけれど濃くなく、サラダはみずみずしく、香の物はしっかり漬かり、辛味の少ない大根おろしが遠慮せずにある。


今日一番の客が自分で、油は一番風呂のよう。得した気分だ。


海老から始まる。写真を撮るのに時間はかけられないから、ぼやける。


引き締まった海老。


甘みの広がる南瓜。


甘みの滲み出す玉葱。


甘みの溶ける茄子。


旨味の弾ける片口鰯。


飛び出る香りの公魚。


香味の詰まった大蒜の芽。


分厚い歯ごたえの榎茸。


さくっとした衣の奥から染み出す油が唇を焼き、魔法と言っては陳腐だが、そのように素材の持ち味の引き出された深みと味わいといったら、天婦羅の魔力としか言いようがない。塩、レモン、つゆ、味は好きに楽しめる。


特に公魚には唸り声をあげそうになった。白い身から湖の香りさえ感じるほどで、百合の花なんかよりもずっと強い芳香だった。


上下の唇がすこしただれている。衣服はやっぱり油の匂いがつく。それでこそ天婦羅の食べがいがある。

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