11月3日(土) 広島市西区草津南にある109シネマズ広島でMETライブビューイングによるヴェルディのオペラ「アイーダ」を観た。


109シネマズ広島で、METライブビューイングによるヴェルディのオペラ「アイーダ」を観た。


指揮:ニコラ・ルイゾッティ

演出:ソニヤ・フリゼル

出演:アンナ・ネトレプコ、アニータ・ラチヴェリシュヴィリ、アレクサンドルス・アントネンコ、クイン・ケルシー、ディミトリー・ベロセルスキー、ライアン・スピード・グリーン


何年も前にYouTubeでワーグナーの「ラインの黄金」を観たことがあり、その時がメトロポリタン歌劇場での公演で、派手で豪華な舞台装置と衣装に、さすがアメリカだと驚いたことがあった。


去年もパンフレットを見ていたが一度も行かず、今年は足を運んでみようと期待して行ってみた。広島ではオペラを観る機会はあまりなく、大きいスクリーンと音響なら生の舞台でなくても、オペラの醍醐味を少しは味わえるだろうと期待して。


座る席が少し良くなかった。D席なら真ん中でちょうどよいだろと思って予約したら、109シネマズの劇場の座席は勾配のある階段になっていて、わずかに顔を上向きにしないとスクリーンは目におさまらず、背もたれがほぼ直角で頭部を超える高さまであるから窮屈だった。サロンシネマや八丁座のほうがソファー型でゆったりしており、行きつけの映像文化ライブラリーも低い背もたれに後頭部を乗せることができるので、ここはやや不満足だ。ただ、背筋を伸ばされるので眠気はいくぶん削がれるが。


第一幕が始まり、しょせん映像だろうと思っていた通り、生の舞台と違って音と演技は臨場感をもって迫ってくるものが足りなかった。カメラは固定されておらず、上手に舞台の展開に合わせて移動して、焦点を合わせてくれるので、それが集中できずにいた。出演者達はさすがの声量と技巧、表現だと思ったが、画面上の声は、やはり遠く感じた。


しかし第二幕が始まり、慣れてくると、巨大で細かい舞台装置と、贅を尽くした衣装と小道具、それに大勢のキャストに占められた舞台に圧倒されて、唖然としてしまった。ヴェルディの音楽もこんなに素晴らしかったのか。DVDをノートパソコンで再生して、ヘッドホンで観て聴いてあくびしながらの「アイーダ」はなんだったのか。巨大な壁の移動装置が降りてきて、その壁の上には兵士達が守り神の彫像のように立ち並び、徐々に下がる壁の背後にはエジプトの凱旋を待つ王とその臣下達が粛然と現れる。それからの凱旋行進は豪壮かつ盛大であり、見事な場面が繰り広げられていった。こんな場面を期待してここに来たのだ。


それから第三幕、第四幕と、ヴェルディの音楽と、出演者の自我を消失した熱のこもった演技と、錯綜するそれぞれの感情と思惑の舞台に没入して楽しんだ。


映画より高いが、実際のオペラよりもはるかに安いライブビューイングは、広島でオペラを味わうには悪くない手段だ。中四国で観ることのできるのは広島だけで、九州も福岡だけ、恵まれたものだ。


約半年の2018ー19シーズン、残り9作品もあるのは嬉しい楽しみだ。次回は2週間後、サン=サーンスの「サムソンとデリラ」、他に、プッチーニ、チレア、ビゼー、ワーグナー、プーランクと有名な作品やMET初演となるのもある。


観客も思ったより多くて、それもなんだか嬉しかった。

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