10月28日(日) 萩の旧萩藩御船倉を観る。

萩の旧萩藩御船倉を観る。


旧山村家住宅にいたガイドさんが旧萩藩御船倉を見せてあげるというので、歩いてついていった。2分もかからないところにあり、鍵を開けて中に入ると、ぞくっとした。


ここは藩主の御座船などを格納していた船倉らしく、両側の玄武岩の石垣と、天井の木組みが荘厳な空間を生み出している。東光寺の毛利市廟所と同等の格式があり、仮にどこかの古墳の内部に入れることがあったら、この場所で感じるのと同じ空間があるだろう。


ここに来れただけで、浜崎地域に来たかいがある。ここは特別だ。太い梁が盆栽のような天狗の味わいがある。木は切られて死んでも、年月が経ると再び生き返る。石も同等だ。動物じゃないからといって生きていないとは言えない。動く動かないだけの見た目の物差しではなく、一歩奥の、わかりやすくいえば魂の存在で判断する。


物凄い梁は、海辺で切られた松らしく、一本以外は当時のままだそうだ。ガイドさんいわく、中国のとある大学の教授がここへ来た時に、この梁のことを説明したら、まったく信じずに抗弁したそうだ。中国にはこんな松はない、だから信じないとのことで、ガイドさんはそれ以上何も言えなかったそうだ。


ひどいものだ。学識のある人の典型的な悪い例だ。頭でっかちだから、凝り固まってしまったから、自分の経験と知識が絶対だと信じ込んで、自分より低い人の意見などまるで耳を貸さないのだ。広い中国にないなら、日本なんかにないのだろう。どんな地位にいても、どんなに頭が良くても、人間がだめならだめなのだ。逆に地位が低く、頭がそうでなくても、人間が良いなら良いのだ。地位と才能などなんの根拠にも、証明にもなりはしないのだ。


薄明かりが射す暗い船倉で、ガイドさんと話しをする。萩城の石垣、その産地、死火山の笹山など。船倉の前は昔海で、今は埋め立てられて川から遠いなど。


なんか得した気分になる、気持ちのよい昼下がりの暗室だ。

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