7月16日(月) 広島市中区幟町にある「Tam soup」でプティオードブルのランチを食べる。

Tam soupでプティオードブルのランチを食べた。


前菜、スープ、サラダ、パン、コーヒ。


男性にとって量は少ないが、少なくない種類の前菜を楽しめるのだから、1200円という値段で十分に楽しめる。質の良い小品を味わえるコンサートのように手軽で、胃腸にも負担がかからない。


冷たいかぼちゃのスープは涼感たっぷりで、クリーミーな甘さが次次と胃に入ってしまい、セロリの若葉を噛むと爽快な香りが口に広がる。


しらすのキッシュは、なぜか明太子と間違えて感じてしまうほどしらすの風味が甘く豊かに膨らんでいる。しらす丼のように一斉に襲いかかってきて素朴な風味の洪水を味わうのではなく、小さいしらすが持っている秘めた素材の可能性が熱源のように発してキッシュ全体に浸透している。


赤キャベツと大根のピクルスは程よい甘みと酸味で、ねっとりとしているが爽やかに舌に落ち着きを与える。


枝豆と豆腐のムースは見た目通り濃厚に味が混ざり合っていて、枝豆のオイリーで緑色の味に質の良い豆腐が組み合わさって湯葉のような格調の高い仕上がりになっている。


半切りにされたミニトマトは季節の甘さが濃厚に口へ染み渡る。


きゅうりのジュレと鮎のリエットは、みずみずしく塩の利いたきゅうりとの透明なほろほろが清流を感じさせ、鮎の肉身と内臓の入り混じった旨味の凝縮したリエットはレバーペーストと同系の味だが、鮎の食べた水苔の香りさえ混じる味覚の渦巻きで、鮎の存在がまさに凝縮されている。


夏野菜のテリーヌはとにかく素材の良さが存分に引き出されて、余計な手は加えられていない。口のなかでくずれるゼリーと共に熱に引き出された野菜の風味が奥ゆかしく運ばれていく。


飾りのブロッコリーと小さい人参は、ここぞという地点に茹で上げられている。


さつまいもは、もはやデザートに成り代われるほど素朴な甘さに引き立てられている。


毛ガニの冬瓜寄せは、彫刻が周囲の空間に膨張するように、この小さい塊が驚くほどの質量と味の破裂を口の中だけでなく口外にまで爆発させる。人人を魅了してやまない蟹エキスの破壊力を思い知らされる。


とうもろこしのガトーは、コーンポタージュの優しい温かさが詰められていて、ペルーの主食じみたもろこし群とは違って、上質に洗練された太陽の甘みを存分に味わえる。


夏バテしている人にはとっては、このうえない恵みとなるランチだろう。夏野菜を散りばめた涼味を常に湛える温度と料理は、ここのシェフの気配りを感じることができた。

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