6月 広島市中区大手町にある広島県民文化センターで「広島神楽定期公演」を観る。

水曜日に「広島神楽」定期公演に行ってきた。


三次市の伊賀和志神楽団の「鍾馗」と「山伏」を観た。


「鍾馗」は余計な台詞がなく、登場するのも二人だけだから非常にシンプルで味わい深い。これを観るたびに良い演目だと思う。木の面をかぶった大疫神も怖い般若のような面と違って親しみのある顔だ。


伊賀和志神楽団は歌がとても良い。活発な奏楽にともなってのびやかに元気よく歌われ、ただの劇場に昔の日本の田園風景を錯覚させるほどの効果をもたらす。


この日は「山伏」を観に来た。どんな演目かと。安達ケ原の黒塚の妖女の話で、能にもある話だ。これが途中まで素晴らしかった。とにかく歌がよい。出演者も小さい人があまりいないから迫力があり、言葉のやりとりを含めた演出も凝っているわりに嫌味がなく、妖女が現れ早業で仮面をつける場面も見応えがあった。


しかし妖女が悪狐となって幕から現れ、山伏が食べられてから、それまでが素晴らしかった分だけ落胆した。いつも思うが、悪狐の着包みが趣味に合わない。これが出ると毎度残念に思う。妖女の衣装と化粧は美しいのに、どうしてあんなぽっちゃりしたソフトクリームのような狐で落ち着いてしまったのだろうか。


後半の展開の速さは不均衡な構成を感じた。


とはいえ、この伊賀和志神楽団はとにかく歌が素晴らしく、かといって舞が悪いわけではない。役者の揃った好感の持てる神楽団だ。

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