ACT.50 作戦会議(Ⅰ)


▽▲▽


「まぁ、すぐにやられたんだけどな」


「ん、誰に話しかけているんですか?」


「いや、何でもない」


 そういってカイトはこの会場の中心にある大円卓に視線を向ける。

 今、カイトとナギはどこにいるのかというと、レンタル式のイベントホールでおなわれている『【“極青冠”セイリュウ】討伐作戦会議』の会場だ。

 【暗夜公忍軍】をはじめとした、三大忍軍が中心となって、セイリュウの討伐に参加の意を示す中小忍軍やパーティーを招待して行われる作戦会議である。

 予定が合わず来られなかったレナを除いた、カイトとナギは、この会場に無論招待されていた。


「じゃぁ行くか」


 そういってカイトは大円卓に向かい、その席に腰を下ろす。

 ナギもその横に座ったところで次々に人が集まってきて、それぞれの席に座る。


「今日はよろしくお願いします」


 そしてカイトの隣には、ライガが座った。

 ソレに対してカイトは軽く会釈する。


「さて、そろそろ各主要組織が出そろうかな?」


「――なんか、よくランキングとかゲーム誌とかで見たことのある有名人ばかりで、緊張します」


「そうなのか、俺にはわからないな」


 そんなことを三人が話していると、そこには見知った顔が入ってきた。

 陣羽織に派手ないで立ちの大男、“三代目ジライヤ”ことカゲミツだ。


「OH~ソーリー、Meが一番遅かったかナ? お待たせしてしまって申し訳なイ」


 相も変らぬうさん臭いしゃべり方に、ホントにコイツ最強の一角なのかと疑問を感じざる終えない。


「いえ、まだ彼女が来ていませんので安心してください」


「あ~、アキちゃんは遅刻魔だからネ! ソレでいて先に始めると拗ねちゃうし、ドーシヨーカ?」


 ライガとジライヤがそんな会話をして、此処にはいない彼女とやらをどうするか、頭を悩ませていたその時だった。


「その必要はないぜ!」


 そういってジライヤの後ろから一人の少女が現れた。

 身長は150cmくらいだろうか、非常に小柄で、黒い髪をかわいらしいツーサイドアップにした子だ。

 しかし服装は、黒い部分甲冑にしゃれこうべをあしらった濃紺の陣羽織とやや剣呑ないで立ち。


「ナギ、あの生意気そうな子供は誰だ?」


 思わすそうナギに耳打ちするカイトだが、その瞬間少女はキッとカイトを睨む。


「おい聞こえてんぞ、ニュービー!! 誰がガキンチョだ誰が!!」



「いや、そこまで言ってねぇよ!?」


 そんな会話に、困ったように笑うライガは、彼女のことを知らないカイトに紹介する。


「彼女は、アキハさんと言って、この国の三大忍軍のうちの一角、総勢八十名を超える武闘派忍軍である【月下牙狼忍軍】の代表を務めている方です」


「あんなのが!?」


「おい、だから聞こえてるっつってんだろ!!」


 そんなカイトの言葉に、年相応に地団駄を踏んで怒るアキハ。

 

「ああ見えても、彼女は“影の国”で――いや、物理攻撃ではこの世界でも準最強と謳われるシノビなんですよ? ついた渾名が【地獄のアキハ】」


 ライガの言葉に今度こそ「え、あのちみっこが?」という言葉を飲み込んだカイト。

 そんなカイトの様子にようやく腹の虫が収まったアキハが、ようやく大円卓に着いた。

 その席で、値踏みするようにずらりと並んだ作戦会議参加メンバーを見回したアキハは、にやりと笑う。

 

「おうおう、そうそうたる顔ぶれじゃねぇか。これならセイリュウとやらも大丈夫なんじゃね?」


「いや、ソウとは限らないネ」


 同じく席に着いたジライヤが、安易な彼女の発言を嗜める。


「そうやってナメてかかった結果が、イズモの惨事ネ。気を引き締めまショ?」


「わかってるよ、俺様なりのジョークだよジョーク」


 そういって肩をすくめるアキハ。

 少しそこでコホンと咳払いをした彼女は、不敵な笑みを浮かべてこう啖呵を切った。





「そいじゃあ、始めますか! この俺様たちに仇を為そうっていう【“極青冠”セイリュウ】って不届きモノをぶっ殺す会議ってやつをよ!!」


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