ACT.46 ファースト・コンタクト(Ⅳ)


▽▲▽


「よく来てくれたね、さぁ、座って座って」


 ライガにそう促されれ、応接用のソファーとテーブルに視線を向けるが、そこにも書籍類が山と積まれていた。


「「「――。」」」


「ご、ごめん! いますぐ片づけるから!」


「あ、わたしも手伝います」


「あ、ありがとう! 助かるよ」


 あまりの手際の悪さに、思わずナギが手を貸す。

 それにつられて、カイトやレナも片づけに手を貸し、しばらくして、ようやく応接ソファー周辺が片付いた。


「いやぁ、ごめんね。“エルドラド”のメモリだけじゃ足りないから、こっちのサーバー上に疑似紙媒体として出力して置いて保管しているんだけど、なかなか整理できなくて」


 そういって申し訳なさげにライガが笑う。


「さぁ、今度こそ座って、ちゃんとお話ししよう!」

 そういって促され、カイトたちはライガの向かい側に横一列に座る。

 向いにライガが座ったのも確認して、カイトはこう話しかけた。


「初めまして、ライガさん。俺がこのパーティーのリーダーを務めさせていただいてるカイトと――」


「ちょっと待って、カイトがリーダーなんて初耳なんだけど」


 自己紹介の途中で、レナが話に割って入る。

 カイトがさらっとリーダー発言したのが気に食わないらしい。


「だってカイトが一番プレイ歴少ないじゃん、ソレでリーダーとかおかしくない? ここはやっぱりプレイ歴も実力も伴ってる私でしょ?」


「プレイ開始50分で俺に負けた奴がなにを言うか!」


「――あの、プレイ歴や実力だと、お二方よりわたしが上なんですが」


「「ナギ(ちゃん)はない」」


「酷い!?」


「あはははははっ!」


 そんな彼らのいつものやりとりに、とうとう笑い出すライガ。

 彼らからすれば、平時の会話劇だが、見知らぬライガから見たらソレは最早軽いコント以外の何物でもなかった。


「いや、失敬失敬。君たちのやりとりがあまりにも面白かったからつい笑ってしまった。許してほしい」


「いや、別に大丈夫ですが」


「君たちのコントを見ていたい気持ちはあるけど、君たちをあまりここに拘束するのも悪いんで、さっそく本題に入らせてもらうよ」


 コホン、と一つ咳払いをして場を正すライガ。

 そして彼は、本題を話し始めた。


「君たちは、今回の“予兆”の二つ名妖魔――【“青冠”の嶺兎】を討伐したって事で間違いないかい?」


「えぇ、まぁそうです。決して楽な戦いではありませんでしたが」


「そうだろうね。でも、うちの精鋭でも手こずるだろう相手に、中忍中心の三人パーティーで勝利したことはすごいと思う。そこは誇っていい」


 笑顔で、カイトたちを称賛するライガ。

 仮にも名をはせている大規模忍軍の長にそんな風に称賛されたことに、カイトたちはむずがゆさを感じた。


「――でここからが本題なんだが,【“青冠”の嶺兎】の討伐報酬で何か用途不明なものはなかったかな?」


「えぇ、何かの招待状のようなものが」


「それだ!!」


 そういってライガは、パチンと指を鳴らす。

 どうやら、今回の話の主眼になるのは、その謎の招待状のようだ。


「実は、あまり知られていないがレイド系の“予兆”をクリアしたものにはソレが低下確率で配られるようなんだよ!」


「ライガさんは、その招待状の正体を知っているのですか?」


「あぁ、そうさ。そしてそれはレイド戦を成功させるための必須条件でもあり、切り札でもあるんだ!」


 そしてその招待状の正体を、彼は告げる。

「それは、レイド戦の先行体験チケット。レイドボスの詳細を秘匿する運営がボクたちに与えたチャンスなんだ」


 その話を聞いて、カイトは彼が自分たちに何を頼みたいのかがわかった気がした。

 つまり、とカイトは口を開く。




「つまり、俺たちに【“極青冠”セイリュウ】の威力偵察をお願いしたいんですね」






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