第128話 地球からの転生者
「話を戻しましょうか」
散々脱線しまくって収集がつかなくなりそうだったので男は話の修正を図った。
「現在、レナザード様が人間界の都市シラルークにいます」
「だからそれはお前が攫ってくるんだろ?」
ザラスはさっき言った事を覚えてないのかもしくは男の意見を無視したのかそんなことを言いだした。
1000年前と変わらないザラスの傍若無人ぶりに男は溜息を吐きながら言う。
「だから場所が悪いと言ったではないですか。 あの町には今、アクアとシルフィルがいます」
男がそう言うとザラスの瞳に興味の色が宿る。
「へぇ、あのガキ共がね。ていうかエルフ野郎がこっちに来てんのババァにもバレてんじゃねぇか?」
ザラスの懸念はもっともだった。
またまた居合わせたにしては出来過ぎのように思える。
だが、それでも男にはレナザードの来訪をフィーリーアに勘づかれていない確信があった。
「それは大丈夫だと思いますよ。確かにフィーリーア様は戦闘能力だけに関してはかの地においても最高クラスでしたが、探知系空間支配系に弱いという弱点があります。竜族という種族特性が大きいのでしょうが」
弱点とは言ってもあくまでその圧倒的な戦闘能力と比べればという話でこの世界の強者と呼ばれる者と比べても何ら遜色ないどころかむしろ高いレベルにあると言える。
だがそれでも絶大な魔力を誇っていた昔の仲間が魔力をほとんど喪失した状態で世界のどこかに前触れなく現れたとしても気付けるかと問われればそれは恐らく無理だろうと男は判断していた。
それと同時にこの世界においてそれに気付けたのは自身だけだという確信と自負もあった。
なぜなら男こそが彼女に権限と能力を与えられ、この世界の管理を任された唯一の存在だったからだ。
「じゃあなんでアクアとシルフィルがそのシラルークっつったか? その町にいるんだよ」
もちろん男としても偶然と片づけるには話が良すぎるということくらいは理解している。
そもそもフィーリーアはもちろんアクアやシルフィルも人間界はおろか自分達の居城から出るすら珍しい事なのだから。
「さぁ、それは分かりませんが、少し前にフィーリーア様が攻撃魔法を撒き散らしながらシラルークへ向かっていった事は確認が取れています。その後、私の部下が独断で説得に向かったようですが、その場での説得に失敗し、魔界西部のアルジール領にて激しい戦闘の後なんとか説得に成功させてフィーリーア様は城へと帰って行ったようです」
と男は確かに部下から報告を受けている。
「ふぅん? アクアとシルフィルはババアのやったことの後始末の為にシラルークに残ったわけか。それでババアがシラルークとかいう町を襲った理由はなんなんだ?」
ザラスはフィーリーアが行った行いそのものにはなんら違和感を覚えなかったが、それでも憂さ晴らしや気まぐれで人間界を襲う程壊れてもいないのは知っている。
そこには大なり小なり確かな理由があるはずなのだ。
「部下が言うにはフィーリーア様が飼っていたペットを冒険者が殺したとかそういう理由だったようですね」
「ペット? あのババアそんなもん飼いだしてたのか?」
ザラスにはフィーリーアがペットと愛でる姿など想像すらつかないが、あまり興味の引かれる話でもなかったのでそれ以上詳しく聞くことはしなかった。
「それにしてもお前の部下そんなに強いのか? 1対1であのババアと戦ったんだろ? ティアからもらったあの時のガキか?」
「いえ、ミツキではありません。そういえばユリウスとマリアとジンクが神になったのはザラス様とフィーリーア様の戦いの後でしたね」
「誰だ? それ?」
またも知らない話にザラスは男に聞き返すと男は苦笑を浮かべる。
「3神ですよ。あのお方じきじきにが神化覚醒を行い、私の部下として連れてこられました。とは言っても手紙が送られてきただけで私はあの方にお会いは出来ませんでしたが」
「へぇー、お前ばっかずるいな。一人くれよ」
まるでお菓子を寄こせくらいの感じで気軽に言うザラスを男は笑顔でかわす。
「私にはこの世界を管理するという役割をあの方から与えられていますから」
「よく言うぜ。なんにもやってねぇくせによ。それでババアと戦ったってやつはどいつだ?」
「ユリウスですね」
「それでそのユリウスとかいうのはミツキみたいに拾ってきたのか? その何て言ったか……?」
ザラスが思い出せずに言い淀んでいると男ははっきりとその世界の名を口にした。
「地球ですか?」
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