第124話 ガンちゃん、名探偵
「なんだと? 今なんて言った?」
「いえ、ですからガデュスを倒したのは確かにアールとかいう冒険者ですが、部下の大半をやったのはかの伝説の始祖竜です。その後、始祖竜は3体のエレメントドラゴンと共に人間界へと猛スピードで去って行きました」
会議終了後、ブリガンティスはセラフィーナには城内に数ある内の一室を与え、セラフィーナと別れた。
その後、話があると言ってきたゾデュスの話を聞くためにゾデュスを部屋に招いていたのだった。
「なんでそんな大事な事を……いや、でかした。あの会議の場でよく報告せず黙っていたな」
ブリガンティスは3人の四天王が集まったあの会議の場で今の報告を他の2人の四天王に漏らさなかったことを素直に感心していた。
仮にあの場で報告していれば、今のような状況には発展してはいなかったかもしれなかった。
「ふはは、そうか、そういうことか」
「なになにー? どういうことー?」
何かを悟った様子のブリガンティスを見上げながら魔人リルがぴょんぴょんと飛び跳ねながらブリガンティスに問う。
「なぁに、簡単な話だ。リル、お前、あの魔王がぽっと出の勇者如きに負けると本当に思ったか?」
「んー、どうだろー? どうなのかな? ゾデュス?」
実際に例の勇者と戦ったのはゾデュスとガデュスである。
となればゾデュス本人に聞くのが一番いいだろうと、リルはそう思ったのだが、リルの中では既に答えはほぼ出ている。
ゾデュスも考える素振りこそ見せているが、ゾデュスもリルと同じくすぐにその考えに辿り着いていた。
「確かにクドウという冒険者の力は人間の域を遥かに超えていました。ですが……」
どう考えても、ゾデュスにはあのクドウとアールという冒険者が魔王ギラスマティアと魔人アルジールを倒せるほどの力を持っているとは思えなかった。
確かにクドウとアールはゾデュスガデュスを圧倒こそしてはいたが、魔王ギラスマティアと魔人アルジールの力はあんなものではない。
魔王ギラスマティアはもちろんだが、魔人アルジールでさえあいさつ代わりに第一級魔法をぶち込んで来るような化け物なのだから。
「やはり、魔王ギラスマティアと魔人アルジールより強いとは思えません。確かに未知の魔法を使ってきたりはしましたが、あれでは魔人アルジールに勝つことさえ難しいはずです。ましてや魔王ギラスマティアを相手になど……」
更に言えば、ゾデュスが会ったクドウとアールは全く手傷を負っている風には見えなかった。
魔王ギラスマティアと魔人アルジールが消息を絶ってからまだ3日程しか経っていない。
仮にあの二人が魔王ギラスマティアと魔人アルジールを討ったというのであれば余程の高位回復魔法を使用したということでなければ、殆ど無傷で魔王ギラスマティアと魔人アルジールに勝利したということになる。
「不可能です。そんなことは」
ここに来てゾデュスは確信した。
魔王ギラスマティアと魔人アルジールを討ったのはクドウとアールではないと。
そして同時にそれはセラフィーナがゾデュスとガデュス、——そしてあの会議の場にいた四天王の3人にも嘘を吐いていたという事に他ならない。
「あの女ぁぁ!」
ふつふつとゾデュスに怒りの感情が込み上げてきた。
ゾデュスはセラフィーナに色々世話になった事は紛れもない事実だが、それとこれとは別の話だ。
ゾデュス自身だけにならともかく主であるブリガンティスにも嘘の情報を話した。
その事がどうしてもゾデュスは許す事が出来なかったのだ。
「今すぐ呼んできます」
ゾデュスは部屋を出ようと、部屋の外に足を向けるが、それをブリガンティスが止めた。
「まぁ待て。ゾデュス。頭を使え。今ここであの女を問い詰めてどうする気だ?」
セラフィーナをここに連れてきて、その事を認めさせたところでブリガンティス達に出来る事は限られている。
セラフィーナを殺せば、今の話をアルレイラとミッキーに説明しなくなくてはいけなくなる。
そうなれば、魔王を討った2人の勇者への脅威の対処と報復という大義名分を失ってしまう。
つまり、3日後に控えた人間界へのクドウ、アールの2勇者討伐は白紙に戻る事になる。
「俺達は何も気づかなかった。あの女の話を信じて魔王ギラスマティアを討ったSSS級勇者への報復作戦に参加した。そういうことだ」
「ガンちゃん、あったまいいー!」
ゾデュスはブリガンティスの周りをきゃっきゃっとグルグル回るリルを見ながら呟いた。
「……納得いきません」
「お前が納得しようがしまいがそんなことはどうでもいいんだよ。とにかくあの女は放っておけ。そんなことよりもだ。魔王とあのクソ龍神族をやったのがそのクドウとアールとかいう冒険者じゃないというならまた別の疑問が出てくるだろ?」
「なになに? ガンちゃん? 名探偵?」
リルがそう言うと、ブリガンティスはまんざらでもなさそうに笑った。
「誰が魔王とあのクソ龍神族を殺したのかって話だ。お前は3神ユリウスがずっと怪しいと言っていたが、俺はそうじゃないと思っている」
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