第117話 男の子は剣とか魔法が好きなんです
それから更に15分ほど待たされた俺達の前にアリアス達はなぜか息を切らせながら現れた。
3人揃って大遅刻である。
「お、遅れてすいません、クドウさん、アールさん」
3人を代表してアリアスが俺とアルジールに謝るが、後ろにいるガランが小声で「マジッスか? マジッスか?」と謎の言葉を連呼しているのが聞こえた気もするが俺は気にしない事にした。
「全然大丈夫ですよ。戦いの後処理をしてくれていたんですよね? こちらこそすいません何もしないで」
「あ、いえ、……そうですね。ではお店の方にも悪いので行きましょうか。あはは」
なぜか歯切れの悪いアリアスに促されて俺達は冒険者協会から出て、ミンカの酒場に向かい始めた。
冒険者協会から出るとすぐにガランはアルジールと何やらお喋りを始めた。
(ホント仲良いな。あの二人)
そんなことを思いながら俺は残った3人、アリアスとニア、システアと一緒に向かう事になった。
俺は先程気になった事をアリアスに尋ねてみた。
「そういえばシステアさんって普段はお洒落さんなんですね。魔人討伐の時は黒ローブだったんで、一瞬気が付きませんでしたよ」
一瞬どころかアルジールがあんなことを言わなければ永遠に気づかなかったなと思いつつ、俺が言うとアリアスは一瞬言葉に詰まったように見えた。
「えっ? あっ、そうですね。今日も冒険者協会のエリーゼさんと洋服屋さんを巡ってたようですね。戦闘時は……ほら、自慢の洋服が汚れるのが嫌みたいでずっと黒ローブを着ていますけど。ねっ! システアさん!」
「えっ! あぁ、そうですね。魔法防御力も中々ですし、黒だから汚れも目立ちませんし! 髪もずっと切れていなかったので!」
アリアスに振られたシステアはなぜか言い訳っぽくそう言う。
「そうですよね。装備は重要ですよね」
うんうんと頷いている俺を見ながらアリアスは言った。
「そういえば、クドウさん装備変えられました? こう言ったら失礼ですけど、魔人討伐の時はもっと頼りなさそうな装備だった気がするんですけど?」
「あ、バレました? かあ……聖竜と戦うにはアレじゃ心元なかったので直前に変えてたんです」
「そうなんですね。それにしても……その剣ってどうやって手に入れたんですか? 凄まじい名剣に見えますけど」
なんで貧弱装備をつけていたのか? とかどこから出したの? とかそういう疑問はあったのだろうが、アリアスの興味の大部分は俺の剣リティスリティアにあったようである。
「えーっと、知り合いにもらいました」
本当は多分知らない少女? にだが、色々ツッコまれると面倒なので俺はそう答えるとアリアスは続けざまに俺に質問する。
「もしかしてユリウス様とか?」
「違いますよ。あと誰が作ったとかそういうのは分かりません」
アリアスがそう考えたのは俺とユリウスが知り合いだと思っての事だろうが、そもそも俺はそこまでユリウスと親交はなくたった2度会ったくらいのものだ。
「そうなんですか? 人間界に存在する伝説級の武器はほとんど剣神ジンク様が作られた物ですから、ユリウス様から賜ったものかと思ったのですけど」
剣神ジンクとはユリウスと同じ3神の一柱で鍛冶を司る神。——とユリウスから聞いた事がある。
ユリウスが言うにはかなり気の良いおっさんで昔からの知り合いらしい。
だが、なぜかユリウスはそれ以上の事は教えてはくれず、俺の中でのイメージでは趣味で剣を作ってるおっさんというのが剣神ジンクの全てだ。
ていうかそもそもの話、俺が持っている装備(ゴミ装備を除く)はほぼ魔界産で母さんからもらった物や魔王時代の戦利品、献上品などが多くを占める。
つまり、人間界にしか装備を卸さない剣神ジンクの装備が俺のコレクションに紛れ込む可能性はかなり低いというわけである。
「まぁ剣神ジンクが作った物以外でも名剣はありますよ」
現に俺の腰にぶら下がってるリティスリティアは剣神ジンクが作った物ではないが、世界最強クラスの剣なのだし。
すると、アリアスは若干目を輝かせながら更に俺に聞いてきた。
「それにクドウさんは剣が無くても魔法も凄いですよね? アールさんから聞いたのですが、聖竜を追いかけるのに使ったあの転移魔法は第一級魔法なんですよね? もしかして、あれ以外にも第一級魔法を?」
「えー、まぁそれなりに」
どう答えようか一瞬迷ったが、流石にアレしか使えないというのも無理があるので俺は少し控えめにそう答えると、アリアスは更に目を輝かせた。
「凄い! もしかしてアールさんも使えたりするんですか?」
「えー、まぁそれなりには」
使えるんですか? もなにもそもそもの今回の騒ぎの発端となったのが、アルジールの第一級魔法雷神招来である。
流石に人前で今後アルジールが雷神招来を使用すると色々な誤解(誤解ではないが)を受けそうなので、使用は控えさせるつもりだが、雷神招来をカウントに入れなくても俺ほどではないにしてもアルジールも第一級魔法を複数習得している。
「……やっぱりですか。なんかそんな気はしていました。僕も使えるようになりたいんですけど周りに使える方がいなくて。師匠も第2級魔法までしか使えませんでしたし」
確かに前勇者ソリュード君も俺に挑んできた時には第2級魔法しか使ってこなかった。
それどころか今まで俺に挑んできた歴代勇者の中に1人も第1級魔法を使用してきた者はおらず、聞いた話だが人間界で第一級魔法に到達できたものは初代勇者パーティの初代勇者とユリウス教の創始者である聖女のみらしい。
ちなみだが、俺とアルジールのいない現在の魔界で第1級魔法を行使できる者は四天王のブリガンティス、アルレイラ、ミッキーと3名もいる。(俺の親族連中は除く)
よく今の今まで人類滅びなかったなと思いつつ俺はアリアスに言った。
「大丈夫ですよ。アリアスさんもすぐ使えるようになりますよ」
「そ、そうですかね?」
そんな会話をしながら俺達はミンカの酒場に向かうのだった。
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