第69話 フハハハハ! 我降臨!
「お断りします。今の貴方とアリアス様を会わせるわけにはいかない」
ギルドマスターは力強くそう答えると、聖竜は冷たい視線をギルドマスターに送った。
「そうか、残念だ」
聖竜がそう呟くと、聖竜の上空数百mに光の粒子が凄まじい勢いで集まってきた。
あの子と共に聖竜が編み出した広範囲殲滅用第1級魔法『竜星群』。
一瞬の間にその発動準備を終えた聖竜。
最早、ギルドマスター達に逃げ場などなかった。
このまま竜聖群が発動してしまえば光の粒子がシラルークのありとあらゆる場所に降り注ぎ、単なる人間界の一都市に過ぎないシラルークなど跡形もなく消え去るのみである。
そんな中、シラルークの町の人々は空の巨大な光の塊を見上げながら神に祈った。
(神よ、世界をこのシラルークをお救いください!)
そして次の瞬間だった。
「フハハハハハ! 我が信徒達よ! 呼んだか!」
ギルドマスターと聖竜達の間の何もなかったはずの空間に突如として、金髪の剣士が出現したのだ。
そして——。
「遅いわ! 神槍乱舞!」
竜星群の発動よりも早く金髪の剣士の無数の光の槍が聖竜に向けて殺到し——。
全ての光の槍が聖竜に着弾したと同時に聖竜の上空に収束していた光の粒子がかき消えた。
ゆっくりと金髪の剣士は大広場へと降り立つとギルドマスターは金髪の剣士に駆け寄り話しかけた。
「貴方は?」
勇者パーティーでもなければ、勇者パーティーと共に東へ向かっていった『魔王』の誰かでもない。
だが、ギルドマスターはその一度も見たことのないはずの金髪の剣士になぜか既視感を覚えていた。
ギルドマスターに問われた金髪の剣士はギルドマスターを見ると言った。
「フハハハハハ! 我が信徒達よ! と言ったであろう。我こそは神ユリウスである!」
「……はっ? えっ?」
言っている意味が分からない。
普通であれば不審者としてしょっぴくところだが今は非常事態だ。
ギルドマスターが対応に困っていると横から都市長が首を突っ込んできた。
「き、貴様なんてことをしてくれたんだ! 聖竜様に手を出すなど! シラルークはもう終わりだ! どうしてくれる!」
どうもこうも目の前の金髪の剣士が聖竜を攻撃していなかったらすでにシラルークは滅んでいたとギルドマスターは思う。
「ふむ」
金髪の謎の剣士は少し考えると、何か思いついたのか指をパチンと鳴らした。
「うぉぉぉ!」
突然空から声が聞こえてきたと思ったら空から人が落ちてきた。
ケガはしていないようだが、見た所老人のようでなにやら高位の法衣を身に纏っている事だけが分かる。
「ほ、法王猊下!」
突然、都市長がそんなことを言いだした。
どこの世界に空から降ってくる法王がいるのかとギルドマスターが思っていると法王猊下はキョロキョロと辺りを見渡した後、金髪の剣士と目が合い、硬直した。
「神ユリウス!」
「フハハハハ! 法王よ、また会ったな!」
法王は混乱していた。
状況は分からないが見た所、どこかの都市の大広場に見える。
ザ・公衆の面前と言えるこんな場所になぜ神ユリウスが——。
そんなことを思っていた法王に金髪の剣士こと神ユリウスは告げた。
「フハハハハ! すまぬな、法王よ! この目の前の男が我に失礼な事を抜かすものでな! 我が誰だか教えてやってはくれぬか?」
法王は状況がまったく掴めなかったが、とりあえずユリウスの頼みを実行することにした。
「どこのどなたかは存ぜぬが、こちらにおわす方は神ユリウスその人で間違いない。決して失礼がないようにお願いしたい」
法王がそう言うと都市長の顔が見る間に青くなっていく。
ギルドマスターが気づくと都市長は地面に顔を擦り付けていた。
「神ユリウスよ! 数々のご無礼をお許しください! どうか! どうか!」
「フハハハハ、よいよい、今は非常事態故、顔を上げるがいいぞ! 信徒よ!」
ユリウスは顔を擦り付けている都市長の腕を引き無理やり体を起こして立ち上げさせた。
「もったいないお言葉! もう一生手は洗いません!」
そういえば、都市長はゴリゴリのユリウス教徒だったなと思いつつ、ギルドマスターは冷や汗を流していた。
「えっ、本当に神ユリウス様?」
「そう言っているであろう? お前もしつこいな」
あ、本当だったらしい。道理でなんか神々しいと思ったわけだ。うん、最初から神ユリウスだと思っていましたよ。はい。
「——話はまだ続くのか?」
業を煮やした聖竜がこちらを睨みつけていた。
「フハハハハ! 今ので無傷か! やはり化け物だな! フハハハハ——」
神ユリウスの笑い声がシラルークの大広間に響き渡ったのだった。
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