約束


 これが君達人間の犯した罪。君達の支配者は、僕達の神を殺したんだ――。



 冬樹の言葉を何度も頭の中で反芻はんすうさせていた直樹は、総管理局に対する不信感が心の中にじわじわと染み渡っていくのを感じていた。

 水元がなにかを隠していることは緊急会議の時からなんとなく分かってはいた。けれど、今までの歴史を覆すほどのことを隠していたとは思っていなかった。真実は直樹の想像を遥かに超えていた。


 ふと気付けば、いつの間にか現実の世界へと戻ってきていた。朽ち果てた森の中には、たった一つの光の玉と、傷を負った小柄な獏。そして直樹だけが存在している。辺りは静寂に包まれていた。


(生き残ったのは夏芽姉ちゃん一人だけ。獏達もヌシ様の力が弱まったことで、現実の世界に肉体を留められなくなってしまったんだ。元々獏は人の心の中に住む概念のような存在なんだけど、ヌシ様の力のおかげで現実にも肉体を具現化出来てた。だけど、ヌシ様が殺られてしまったから、姉ちゃんを助けられる人も獏もいなかった。けどね、ここにいる小さな獏が、ヌシ様の力が消えて肉体が消えそうになる間際、渾身の力で姉ちゃんを捕らえていたアンドロイドの腕を切り落としたんだ。拘束が離れた一瞬の隙に姉ちゃんは逃げ出して、そこから姉ちゃんと獏の復讐が始まったんだよ)


 冬樹は低い唸り声を上げながらうずくまる獏の周りを、慰めるようにゆっくりと漂っている。


「……さっき、風花や大門秀樹のことを知ってるような口ぶりだったよな? 教えてくれないか、風花は俺の恋人で大門秀樹は……父親なんだ」


 直樹は少し俯きながらそう問いかけた。真実を知ってしまってからしおらしくなった直樹を心配しているのか、獏に寄り添っていた冬樹はゆっくりとそばに寄ってくる。腕にくっつくように寄り添った光の玉はほんのりと暖かく、心に淡い光が灯ったような感覚を覚えた。


(そうだったんだね。秀樹先生は心優しい人だった。秀樹先生はヌシ様を殺した人達と同じ街から来ていたけれど、彼らが犯した罪を酷く悔やんでた。風花はあのヌシ様が認めた人間だったから、夏芽姉ちゃんは風花を信用したんだと思う)


 またしても風花の名前が出たことを直樹は聞き逃さなかった。今度こそ、と食い気味に冬樹へと詰め寄る。


「風花をぬしが認めたってどういうことだ? ぬしに会ったことがあるのか? なんで風花のことを知ってる?」


 まくし立てるように冬樹に詰め寄る。冬樹がなにか答えようとした時、白衣のポケットに入っているスマホが振動していることに気が付いた。


「……誰だ、こんな時に。ちょっとごめんな」


 冬樹に一言詫び、スマホを取り出して液晶の表示を確認すると、電話の相手は玲子だった。迷うことなく通話の表示をタップした直樹は、空間に映像として映し出された玲子と目が合った。


「あぁ、良かった。無事でしたね。こちらは住民の避難は全て終えました。あとは残った獏、数体の捕獲に皆協力してくれています。そちらはどうですか? 獏のぬしには会えましたか?」


 直樹が無事であることを知って、安堵したような表情で玲子は問いかける。その問いに、直樹は静かに首を横に振った。


「いや……ぬしは、十三年前に殺されています。総管理局の手によって。西川さいかわさんは知ってたんですよね、このこと」


 玲子の目を真っ直ぐ見つめる。しばしの沈黙。直樹の視線に耐えられなくなったのか、玲子はそっと目を伏せて重い口を開いた。


「……えぇ、知っていました。そのことを知っているということは、枢木一族の心と会話したのですね?」


(僕のことだね)


 隣で浮かぶ冬樹は、玲子にも見えるよう直樹の頭の周辺をぐるぐると廻り始める。その姿を見た玲子は懐かしそうに微笑んだ。


「あぁ、良かった。元気そうね。冬樹くん」


(玲子先生も元気そうで良かったよ)


 再会を懐かしむ二人の会話のおかげですっかり置いてけぼりを食らった直樹は、割り込むように声を張り上げた。


「ちょっと待ってくださいよ、西川さん。まだ冬樹からちゃんと最後まで話を聞いてない。父さんのことは? 風花のことをなんで知ってるんだよ」


「秀樹先生のことはいずれお話しましょう。けど、今は一刻を争います。先程から直樹さんが仰ってる風花とは、D.Dの井上風花いのうえふうかさんのことですね?」


 玲子の言葉に直樹は不満ながらも仕方なく頷く。玲子は次に、未だぐるぐると廻り続けている冬樹へと視線を向けた。


「風花さんのことを知っているのは初めて知ったわ。それと疑問なのだけど、十三年前、確かにぬしが殺されたのは事実。けれど、初めて出会った時あなたは、今は力が弱まってるだけで十年もすれば肉体の具現化まではいかなくても、概念として復活することは出来るって言っていたわよね? でも現実、十三年経った今もぬしは不在。それは風花さんとなにか関係があるんじゃない? 」


 玲子の鋭い指摘に、直樹の周りを廻っていた冬樹は廻るのをやめ、スマホから浮かび上がる映像の向こう側に居る玲子からも、はっきりと見える位置で静止した。


(玲子先生はさすがだね。そうだよ、ヌシ様が未だ戻って来ていないのも、風花が消えたことも、全部繋がってるんだ)


 少しの沈黙。直樹はごくりと唾を飲み込んで、冬樹の次の言葉を待った。


(二年前、風花が最後に戦った獏。あれがヌシ様だ。あの時、風花はヌシ様と一緒に消えたように見えたかもしれないけど、消えてなんかいないよ。今も"彼女"の心の中でヌシ様と一緒にいる)


 冬樹が言う"彼女"には、心当たりがあった。直樹は思わず声を上げる。


「"彼女"……彩ちゃんか……!」


「お知り合いですか?」


「英里ちゃんの夢の中へ入る時、俺のサポート役として同行していた隼人という若い男を覚えてますか? あいつの妹です」


「あぁ、あの方の」


 隼人のこともちゃんと覚えていたようで、玲子は納得したように頷いた。

 じゃあ、彩ちゃんの心の中に入れば、ぬしに会えるんじゃないのか、そう言おうとした時、冬樹が小さな声で呟いた。


(佐久間さくま……佐久間修一さくましゅういち)


 佐久間。どこかで聞いたことのある名前だ。思い出そうとするが、色々な情報が一気に増えたため思考がまとまらない。思い出そうと考え込む直樹が答えに辿り着くよりも先に、玲子が口を開いた。


「佐久間……。なんとなくそんな気はしていましたが……やはり彼が関わっていたのですね。冬樹くん、夏芽ちゃんの姿が見えないのも、また獏が暴れ出しているのも、佐久間が関わっているのね?」


(僕ら一族はね、心もヌシ様と繋がってるんだ。だから、風花のことも知ってる。ヌシ様が戻ってこれないのは、あの時怪我をして力を失ったからだってことも。風花のおかげで致命傷にはならなかったみたいだけど……。二年前のあの日以降、獏が一時的に消えた時期があったでしょう? あれはヌシ様が人間に対しての怒りを沈めたからだよ。夏芽姉ちゃんも少し期待してたんだ、なのに人間がまた僕らを裏切った。それには先生の言う通り、佐久間が関わってる。佐久間は姉ちゃんの持つ枢木の力が欲しいんだ。姉ちゃんが捕まってるところも知ってる。案内するよ、だから姉ちゃんを助けて。そしたら獏も止められるから)


 二人の会話についていけない直樹は手を上げて、二人の注目を集める。こんがらがる頭の中をなんとか整理しながら、直樹はあることを思い出した。つかさから最初に連絡が来た時、確か言っていた。「佐久間修一という男にやられた」と。


「つかさとジル、そして自然保護課室長の笹山聡ささやまさとしさんが、現在総管理局本部に多くの管理局員と閉じ込められています。家を出る前連絡がきましたが、その時に言っていました。佐久間修一という男にやられ、その男が持っていた球体から突然獏が飛び出してきたと 」


「本部のシステムがハッキングされ、多くの局員が閉じ込められているのは知っていました。現在も多くの企業がなんとか外部からシステムの奪還ができないかと試みているところです。まさか、ハッキングの犯人が佐久間で、そこにつかささんもいるだなんて……」


 玲子は目頭を押さえ、深い溜息をついた。一気に疲れが出たようだ。頭を振ってなにかを吹っ切るような様子を見せると、彼女はまた凛とした瞳で二人を見つめ話し始めた。


「彼の狙いは冬樹くんの言うように枢木……ヌシの力でしょう。今もう既に枢木一族の力を得ていると思っていい。夏芽ちゃんからなにかしらの方法で得ていると思います。その球体から飛び出してきた獏も今暴れ回っている獏も操られているか、夏芽ちゃんを連れ去った人間への怒りといったところ。今すべきなのは、枢木一族最後の一人である彼女を救い出し、獏の怒りを止めることですわ。彩さんのことは私に任せてください。住民の避難は済んでいますし、すぐに連絡が取れるように手配致します」


(なら、僕が案内するよ! すぐ出発しよう! 夏芽姉ちゃん、僕らが死んでからこの森に帰ってきてないから、ヌシ様がこんなこと望んでないこともなにも知らないんだ。きっと一人で心細いと思うんだ)


 今すぐにでも飛び出していきそうな冬樹を直樹は呼び止めた。玲子と冬樹は佐久間という男のことを知っているようだが、直樹からすれば聞いたこともない名前だ。話についていけない。


「あの、全然話についていけないんですが……佐久間とは何者なんですか?」


「あぁ、直樹さんは知らなくて当然ですわね。話すと長くなるので簡単に言うと、彼は大門秀樹の弟子です」


 秀樹に自分達以外に弟子がいたなんて初めて聞いた事実だった。さらに質問を重ねようと口を開いた直樹を、玲子が言葉で牽制する。


「先程お話ししたとおり、秀樹先生のことはこの騒動が解決したらお話ししますわ。今は夏芽さんの救出と、獏の怒りを鎮めることが先決です」


 さっきよりも強い口調で話す玲子に逆らうほど、直樹も馬鹿ではなかった。秀樹のことを聞き出すのは諦めて話題を変える。


「西川さん、そばにカレンはいますか?」


 どうしてもやりたことがあって、そのためにはカレンに頼みたいことがあったのだ。


「あぁ、もちろんいますわ、カレン。直樹さんが……」


 どうやら近くにいるらしいカレンに玲子が声をかける。彼女が最後まで言い終わる前に、勢いよく飛び出してきたカレンの姿で映像がいっぱいになった。カレンのテンションというものは、この朽ち果てた森の雰囲気とは驚くほどに不釣り合いだ。


「ご主人! ご無事だったんですね! 良かったです! なにか手がかりは掴めましたか?!」


「あぁ、今から獏を止めに行く。西川さんに貰った転送装置でこっちに呼び出そうと思ってるんだが……その前に包帯と消毒液なんかの簡単なやつでいい、医療セットを西川さんに持たせて貰ってくれ」


「ご主人、怪我したんですか!? あれほど怪我には気をつけろとつかささんにも念を押されたのに……」


「違うわ! 俺じゃない、来ればわかる。西川さんお願いします」


 カレンの後ろにいるであろう玲子に聞こえるよう、声を張り上げる。「分かりましたわ」という玲子の声が聞こえたので、どうやらちゃんと理解してもらえたようだ。



 数十分後、準備のためにスマホの画面から離れていた玲子が戻ってきた。


「準備OKです。では、夏芽ちゃんと獏のことはそちらに任せます。佐久間のことはこちらに任せてください。つかささんと連携して、できる限り早急に事態を収めますわ」


「分かりました。つかさを頼みます」


 お互い軽く頭を下げ、通話は終了した。早速白衣のポケットから転送装置を取り出す。玲子に教えられた通り、裏側のスイッチを押して地面へと設置した。甲高い機械音と共に青い光が強くなり、円盤に描かれた模様が地面に浮かび上がった。一際強く光り、あまりの眩しさに思わず腕で目を覆った直樹の鼓膜を、聞き慣れたアンドロイドの音声が激しく震わせた。


「ご主人! 言われた物ちゃーんと持ってきましたよ!」


 静かな森の中に響くカレンの声はやたらと大きく、直樹はあからさまに嫌な顔をして耳に指を突っ込んだ。


「分かった分かった、少し静かにしろ。怪我してる奴がいるんだから」


「怪我? あれ? 他にも誰かいましたっけ?」


(初めまして。アンドロイドさん、僕の名前は冬樹だよ)


 不思議そうに首を傾げていたカレンの問いに冬樹が答える。挨拶をするようにカレンの周りをぐるぐると廻り始める。どうも冬樹は廻るのが好きらしい。

 喋る光の玉の突然の出現に、少しだけびっくりしたような顔を浮かべたカレンだったが、すぐに嬉しそうににっこりと笑った。


「おぉ! あなたが枢木一族の方ですね。玲子さんとご主人の話をなんとなーく聞いてましたから、知ってますよ! 冬樹さんですね!」


(あはは! 元気いっぱいだなぁ。こんなに喜怒哀楽がはっきりしてるアンドロイド初めて見たよ。秀樹先生にそっくりだ。君は直樹に造られたの?)


「いや、カレンは父さんが造ったんだよ。だから似てるのかもな。父さんもいたずら好きだったからな」


 二人に秀樹に似ていると言われたのがよほど嬉しかったのだろう。鼻の下を人差し指でかきながら、無邪気な笑顔を浮かべた。


 少し和やかな雰囲気になったところで、本題に移るため直樹は手を叩いた。ぱんっと乾いた音が森の中に響く。


「さ! 無駄話はここまでだ。怪我をしてるってのは、そこにいる獏だよ」


 そう言って木々の間でうずくまる獏を指差した。カレンはうずくまる獏を見た瞬間、左目にレーダーを出現させ戦闘態勢に入った。まぁ、無理もない。直樹だって、獏が危険な存在ではないという事実は信じがたく、まだ半信半疑なのだから。


「大丈夫だよ。獏は冬樹の姉貴が捕らえられたことに怒ってるだけだ。俺に任せろ」


「ご主人! なにがあるか分かりません、気を付けてください」


 心配するカレンを置いて、獏の元へとゆっくり歩み寄る。近付くほどに獏の唸り声が激しくなっていく。


「グルルルルル……!!」


 ――チカヅクナ! ナツメヲカエセ!


 また、獣のような低い声が頭の中に響いた。ひたすら、夏芽を返せと繰り返している。

 直樹は獏と同じ目線になるように、少し離れた場所でしゃがみ込んだ。獏の赤い瞳をじっと見つめる。


「ごめんな。お前らの大切な物を奪ってしまって。赦してもらおうなんて思ってない。だけど、少しだけ罪滅ぼしさせてくれよ。夏芽は必ず俺が助け出す。それと、お前のことも助けたいんだ。怪我の手当をさせてくれないか?」


 唸り声を上げ続ける獏にそっと左手を伸ばした。

 どこにそんな力が残っていたのだろう。不用意に手を伸ばした直樹が気に入らないとでも言うように、獏は直樹の左手に勢いよく噛み付いた。


「うっ! てぇっ……」


 激痛が走る。けれど、力はかなり弱まっているらしい、小型犬に噛まれた程度の痛みだ。けれど、牙は深く突き刺さり、生温かい鮮血が地面に滴り落ちた。


「ご主人!」


 咄嗟に飛び出そうと、腕を剣に変形させたカレンを冬樹が呼び止めた。


(ダメだよ、直樹に任せよう。今近付いたらきっと"彼"は、直樹を信用しなくなる)


 冬樹に諭され、不満そうにしながらも腕を元の形態へと変形させ留まった。


「ごめんな……辛かったよな。腹立たしかったよな。大事な人、守れないのは辛いよな」


 言いながら、直樹は自分が泣いていることに気付いた。大粒の涙が頬に筋を作っていく。

 痛みで泣いているのか、獏への同情で泣いているのか、それとも――。


 直樹の瞳から溢れ出した涙が、獏の鼻頭へと落ちていく。しまいには、声を上げて泣いている直樹。そんな彼を見た獏は唸るのをやめた。そして、噛み付いていた顎の力を徐々に弱めていく。


 ――オマエモ、タイセツナヒト、ナクシタ。ツライノカ?


 カタコトのような言葉で話す獏の声は、とても優しい声をしていた。獏の質問に直樹は黙って頷く。それが合図だったかのように、突き刺さった牙をゆっくりと引き抜いた。痛みが走ったが、直樹は歯を食いしばって耐える。

 深く穴の空いた左手を獏は優しく舐め始めた。すると不思議なことに、傷口がゆっくりと塞がっていく。痛みも徐々に和らいでいった。この不思議な現象が信じられず、後ろにいるはずの冬樹に問いかける。


「傷が……傷が治っていってる、どういうことだこれ」


(獏には癒しの力があるんだ。でもそれは、獏自身には使えないし、心を開いた人にしか作用しない。獏は信用できる人にはほんとに優しい生き物なんだよ)


「そっか……ありがとな、信用してくれて。次は俺がお前を助けるからさ。少しだけじっとしててくれな」


 頭を撫でてやると、獏は満足そうに目を閉じた。左手の傷が完全に塞がり、元に戻ったところで獏の傷の手当を開始する。消毒液をかけるとしみるらしく、少し唸り声を上げたが、それ以外は大人しくしていた。獏は思っていた以上に賢い生き物らしい。枢木一族が神と言うだけはあるのだろう。


「よし! これでOKだ。腕はもう元に戻らないかもしれないけど、これでもう大丈夫だ。安心して待っててくれ」


 もう一度頭を撫でてやってから立ち上がった。後ろで待つカレンと冬樹に声をかけ、冬樹の案内のもと夏芽が捕らえられている場所へと向かおうとしたその時、


 ――ナツメノトコロ、イキタイ。フゥリン、アンナイスル。


 獏の声が聞こえて後ろを振り返ると、片足で上手くバランスを取りながら、木々の間にある彼の寝床からゆっくりと這いずって出てきた。


「いやいや、まだ傷治った訳じゃないんだそ。大人しくしてろ」


 ――イヤダ! ナツメ、タスケイキタイ!


(どうしても一緒に行きたいみたいだね。こうなったらフゥリンは止まらないよ)


 そう言って楽しそうにケラケラ笑う冬樹。こいつはフゥリンって名前なのかと、直樹は微妙なタイミングで名前を知ってしまったような気がした。

 その隣で不思議そうに首を傾げるカレンを見て、直樹はあることに気付く。そうか、カレンには獏の声が聞こえてないのか。


「ところで疑問なんだが」


(なんだい?)


「獏と会話できるのって枢木一族だけだよな。なんで俺には分かるんだ?」


(それは、ヌシ様と一緒にいて力を近くで受け続けている風花の心と近いところにいるからじゃないかな? 詳しいことは僕にも分からないや)


 ふわふわと浮かぶ冬樹はそう答えた。


 風花の心と一番近いところにいる……か。その推測を聞いて、直樹は少しだけ照れくさそうに笑う。それを誤魔化すようにわざと大きな声で出発の号令をかけた。


「よし! これでOKだな。みんなで夏芽を助けに行こう」


 直樹の言葉で、今か今かとそわそわしていたフゥリンが元気よく歩き出した。まだ歩き方は弱々しいが元気そうだった。


 夜闇に紛れたふくろうが彼らを見守るように、ホーホーと悲しげな鳴き声を響かせていた――。


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