第47話 迫る追跡者
「……分霊様 ! なぜ
マネキンは昨日までコウが羽織っていたモスグリーンの
「分をわきまえなさい。あなたにはその資格がありません」。
アイテムボックス内に魔力切れ状態で収納されているコウの元へ駆け付けたいのであろう。
「資格 !? 妖精族の王種たる
ゾネは片手を胸に当て、もう片手を大きく振って、食い下がった。
「……そういう意味で言っているのではありません。では逆に聞きますが、あなたは自分の
無機質な白い顔が何の表情も無く 、
その
あくまでウエストバッグ型のアイテムボックスに宿ったポケットが操作しているだけなのだが、それは言語化できない何か恐ろしい迫力を
「…… !? アイテムボックスにお宿りになった分霊様にとって……コウ様を収納するというのは、そういう意味なのですか…… ? 」。
「私は、私の中に彼以外の生命あるものを招き入れる気はありません。それだけです」。
それだけ言うと、「ポケット」は歩み始めた。
目的地である妖精の国へ向かって。
「……なんだかよくわからないけど
「あ……うん。きっとそうね。あんまり気にしない方がいいと思うわ」。
歯切れの悪い返事だ。
「どうしたんだ ? いつものお前なら狂喜して食いつきそうなやり取りだったじゃないか ? 」。
アゼルが少しだけ意地悪な顔で言った。
「……あんたは私を何だと思ってんのよ…… ! あれは……その……生々しすぎてダメよ……」。
顔を真っ赤にして
その様子を見て逆に焦る少年。
そんな二人の様子をイマイチ理解できずに眺めるドナとデニス。
「なんだか女の子達がお客さんを取り合って喧嘩になったのを思い出すね ! 四月の御使い様、大人気だね…… ! 」。
こちらも小声でエルフのセレステがすぐ隣を飛ぶ
「……それとは違うわ。あれは同じように大盤振る舞いでお金を使う客がもう一人現れたら解決したでしょ。でもあの御使いに代わりはいない。……だから厄介なのよ」。
そう ? と首をかしげるセレステに構わず、スーは一行の先頭と最後尾を見る。
(あの御使いが態度をはっきりさせれば解決するレベルであればいいんだけど……)。
スーは小さな身体を全部使って、大きな溜息を吐いた。
「……今更だけど、こんなに急ぐんなら馬車を用意すれば良かったんじゃない ? 」。
最低限の休憩しかとらず、疲労は回復薬で誤魔化しての強行軍に最年長のおばちゃんから苦情が出た。
「『聖女』に見つかった時点で、あのまますぐ街から出る以外の選択肢はなかったわ……」。
力なくネリーが答えた。
質の良い革の鎧を
見た目は立派だが、彼女はメイド。
肉体を酷使する今の状況で一番参っていたのは彼女だった。
「……後ろからついて来てるな。人狼族なら今、対処しておいた方が良くないか ? 」。
キャスが槍を握りしめて、背後からつかず離れず追ってくる気配への対応を提案した。
「……もし追手が人狼なら私達が向かって行けば、あっちは
回復薬を
今夜は満月。
人狼族が最も力を強める時だ。
少しずつ低くなってきた太陽が疲れ切った彼女を焦らせていく。
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